プロジェクトを立ち上げ、コミュニティを作り参加者全員で意見を出し合い作り上げ、クラウドファンディングで資金調達し、3Dプリンターを使って少量生産。これはアメリカ・アリゾナ州にある自動車メーカーの車を製造する工程である。
今までの自動車メーカーは巨大資本を使って大量生産し、それをディーラーを通して販売するという方法だが、2007創業のローカルモーターズのアプローチはまったく違う。3Dプリンターを駆使した製造方法(マイクロファクトリー)で少量生産して販売するのを強みとしている。
皆さんは現在販売されている車を見て、「どれも似たようなデザインだなぁ」とか「昔の車はかっこよかったなぁ」とか思ったことはないだろうか?
今までの大量生産して値段を抑えていく方法では、大量に売らないといけない為どうしても万人受けするデザインや性能にするしかなく、万人受けを考えれば考えるほど「普通」に近づいていき、人によっては面白みのないと思う物が出来上がってしまう。つまり攻めたデザインやこだわった性能になりにくいのだ。
しかしローカルモーターズのやり方だと、一部の自動車マニアを集めてマニア受けする車をマニア自身で作り上げることが出来るのだ。
創業から1年後、そうして出来上がったのがラリーファイターだ。値段は決して安くはないが、圧倒的なパフォーマンスを誇り、6.2リットルのV8エンジン430馬力を出力し、最大トルクは約575Nm。
オフローダーでありながら四輪駆動ではなく後輪駆動で、理由はサスペンション、エンジン、タイヤの性能などが高いため後輪駆動にしたほうがむしろ速いからだそうだ。
最高速度は210キロで100キロに達するまではたった6秒!比較的軽量な車重とパワフルなエンジン、4輪ディスクブレーキ、優れたサスペンションの組み合わせで、どんな地形でも高速で駆け抜けることができる。また車高も2段階で変更することができ、オンロードでは車高を下げることで安定した走行を実現。
圧倒的なパフォーマンスにスポーツカーをオフローダーにしたような男心をくすぐるクールなデザイン。まさにマニア為に作られた車である。
それだけでは終わらない。ラリーファイターを購入した人はなんと自分の車を自分で組み立てることができるのだ。
ローカルモーターズは自動車メーカーでありながら生産ラインがなく倉庫のような工場ひとつで製作が完結してしまう。6日間の製造期間その工場で技術者指導のもと自分の車の組み立て作業に参加できる。これも自動車マニアにはたまらないだろう。
2014年にはカナダで行われた展示会にて世界で初めて0から完全に動く電気自動車「Strati(ストラティ)」を3Dプリンターを使って会期中のたった6日間で作り上げ会場を驚かせた。その数年後にはさらStratiを進化させたLM3D Swim(スイム)を発表し、現在販売されている。
2016年にはIBMとの共同開発による人工知能搭載の自動運転バス「Olli(オリ)」を発表。もちろん3Dプリンターを使って制作されている。
最大乗車人数は12人で使い方は多種多様。スマートフォンを使って呼び出すことができ、運転手のいないタクシーのように臨機応変に行き先を変えて使うことを想定して作られている。
OlliにはIBMの人工知能「Watson」が搭載されていて自動運転機能を担当するのではなく乗客とコミュニケーションを取りガイドのように周辺のレストランやショップ情報や名所などを教えてもらえる。
ローカルモーターズが目指すものは「マイクロファクトリー(小さな工場)」が様々な地域にでき、そこでその地域のディーラーとして地域が欲しいものそこで生産していく。地域内循環経済を目指している。
革新的な方法で革新的な自動車を生み出しているローカルモーターズ。次はどんな自動車で世界を驚かせてくれるのだろうか。楽しみである。