朝は太陽の光の温もりで目が覚める。
このホテルのいいところだ。
クスコで泊まったこのホテルは中心地から徒歩で10分ほど離れているけれど、日当たりが最高な上に英語可能な頼れるスタッフもいて、wifiも早い!しかも、毎日ハウスキーピングもしてくれる。
2400円でこのサービスは居心地が良すぎる!
ボリビアやペルーは高地でも暖房がついてる場所は安めの宿ではなかなか無い。
そもそも電気の問題(時たま停電がある)もあるから暖房に信頼もおけない。
だからと言うのもなんだけれど、こう言うそもそも日当たりが良くて室温が高くなる部屋は本当に嬉しかった。
お昼前に外へと出て、友人のサシから聞いていたマーケットに向かってみる。
橋を渡って、道路をまっすぐ行くこの道はもう私たちのお馴染みの道になった。
何やら盛り上がっているよう・・・。
市場を見つけ、中へと入ってみた。
噂に聞いていたジューサーバー!
たくさんのお店が横にズラッと並ぶ。
フルーツを高くまで積み上げた横からおばさんが顔を出し、
「ウチで飲んでいきな!何がいいんだい?」などと口々に声をかけてくる。
目があって笑顔のおばちゃんのところへと吸い込まれて行った。
一番安いmixを頼むと、その場でささっと作ってくれて紙カップに入れて渡してくれる。
自然な味わいのフルーツジュース。
でも、、、タイのミックスジュースの方が美味しかったかな!ごめん、おばちゃん。
奥へ奥へと行くと今度はご飯のお店がたくさんあるのが見える。
左側は看板もあって、写真付きのメニューなんかもある。
見るからにツアリスト向けだな、と読みここはスルーして行く。
知らなければよかったことの一つかも知れないけど、知ってしまったんだ。
「ローカルフードの方が安くて美味い!」と言う法則を。
いくつもの店が並ぶ中で、目をつけた店でどれが美味しそうか、周りの人が食べているのを眺める。
中で忙しそうに働くおばさんたちだが、私たちに気づくと、何やら声をかけてくれる。
「何が食べたいの?なんでもあるわよ、ポージョ、ポテト、カルネ、今日はペスカードもあるわよ!さっ!どれにする?」
忙しい手の動きは止まらず、顔だけがこちらを向いている。
C「あ、じゃあ、これ!」
指差しで注文をした。
OK!と小さく頷くとまた黙々と作業を進めていた。
C「Hもなんか頼みなよ!どうすんの?」
H「え~と、あれにしようかな。あのボールみたいなのが乗ってるの!」
C「美味しいといいね!」
私たちのご飯が届くと、相手いなかった席がズイズイっと左右に開いて、席ができた。
みんなすぐに譲ってくれる。
「グラシアス!(ありがとう)」を言うと、食べ始めた。
私が頼んだのはこれ、アヒ・デ・ガジーナ(Ají de gallina)。
端的に言って、ホワイトシチューに割いた鶏肉が入ったもの!って感じのまろやか~な味わい。
それもそのはずで、チーズ、ジャガイモ、牛乳をベースにしているらしい。
こっくりとした味わいにイエローホットペッパーとクミンでスパイシーな風味が絶妙なバランスだった。
これは子どもの頃から食べたクリームシチューにライス的な食事に似ていたせいだろうか。
ものすごくすんなりと入ってきた。
Hのはかき揚げみたいな食べ物だったらしい。
一口もらったが、なんだかサクサクした食べ物だった。
このマーケットが気に入った私たちはこの後クスコにいる間、何度もこの市場を訪れ、お昼をこの場所でいただいた。
この日はお昼ご飯を食べた後にサシとクスコの山に歩いて行ってみる予定だった。
私たちはいつものように市場に行き、ご飯を済ませた。
この日はスープ系の料理。
出汁がしっかり出ていて美味しかった。
パスタの麺が入っていたけれど150%ふやけてた。そこにこだわりはないらしい。
そういえば、ペルーは日本(日本人の元大統領もいる)、スペイン、イタリアなんかの文化が入り混じっているらしく、今世界のグルメたちにも話題の場所なんだとか。
ご飯をちゃちゃっと済ませると、外に出る。
すると、何やら上にセイントOOが乗ったお神輿のようなものがわっせわっせと近づいてくる。
大興奮で、iphoneで動画を撮影し、カメラで写真を撮った。
人が多く、押し合いになるような状態だった。
何度か、カメラとiphoneを出し入れしたあと、急に重さが無くなったのに気づいた。
ハッとしてバッグに手を入れた時、そこにはもう私の可愛いiPhoneはなかった。
前に掛けていたポシェットにはiPhoneしか入れていなかったからだろう、簡単に取られてしまった。
注意しろ、注意しろ!と何度も言われていたから必ず、ファスナーは締めていたのに。
ぱっくりと開いたポシェットの中をもう一度覗き込んだ。
が、何もそこには無く、空っぽのポシェットだけが首から下がっているだけだった。
H「やっぱりね~。やると思ってたよ。」
C「なんでよ!ちゃんとファスナー締めてたもん。」
確かに、どこに入れたかよく忘れてしまい、ものをなくすことが多い私。
ここに入れると決めていても、ついつい違う場所に入れたり、次のことに目が行ってしまって注意が削がれがちな私。
毎日毎日、
「気をつけろ。気をつけろよ、ファスナー空いてるぞ!そこ締めないのか?」
などとうるさく言われていた。
もちろん、締めていたけれど、そんなことスリには関係なかったんだ・・・。
と落ち込んだ。
仕方なしにサシに説明しに行ったのち、そのまま警察へ行った。
この警察がまた遠いところにあって、調書を描いてもらうのにまた時間がかかった。
2時間ほどかかって、やっと調書が出来上がったが、もう山には登れない時間になってしまった。
だが、街に戻ると人だかりを作っていたあの祭りはまだやっていた。
悲しい気持ちだったけれど、祭りに罪はない。
素敵な写真だけ無心に撮影して終了。
夜はお祭りに定番だと言うネズミのあぶり焼きを食べた。
ムカつな~スリ。と思いながら。
それでもH氏には
「不注意なお前が悪い。」と言われ凹んだ。
不注意じゃない、たまたま運が悪かっただけ。と言いたかったけれど、多分間抜けそうなやつを狙ってるんだ。
スキがあったってことだ。自分がムカつく!とまたイラついた。
そしてこの旅中、私は携帯電話を持たないことが決まった。
携帯電話ってなんのために持ってるんだっけ・・・?
いや、むしろほとんどwifiのない環境で持つ意味ってなんだっけ?携帯を使ってない時間って何してたんだっけ?
携帯電話をいじっていた時間はそんなことを考える時間に変わった。
どうしても友人のサシとどこかに一緒に行きたかった私は、マチュピチュには行ってしまったと言うサシを近くの山、レインボーマウンテインに誘った。
だいたい3時間くらいの短いトレッキング。
だけど、標高は私たちが登ったアンナプルナB,Cよりも高い。
スタート地点が4000mくらいで標高5200mまで歩く。
早朝に出発してきて、ずっとバスで移動した。
到着するといきなり、トレッキングが始まる。
ほんの少しだけガイドから説明があって、あとはひたすら歩くだけ。
もし歩きたくなくなった人はお金を払えば馬に乗せてもらえるよ!と言う話もあったけれど、トレッキングはもちろん歩くのが醍醐味。
そして歩いて辛い思いをした先に見る景色こそが最高なのだ。
もちろん、歩かない人も、歩けない人もいたけど。
私たちはずんずんと歩いた。
そうして結構歩けるつもりでサクサク歩いていたが、気づいたらサシはもっともっと先を歩いていた。
踊るような気分で参加したこのトレッキングだが、やはり標高5000mはきつい。
高山病になった。
サシはたまに私たちを先の方で待っていてくれたけれど基本歩くのがめちゃ早い。
スタスタ普通の道を歩いてく以上に早く歩く。
サシはこの間マチュピチュから戻ってきたというけれど、そもそもマチュピチュへの行き方がすごい。
5daysトレイルしたというのだ。
それもキャンプサイトでも何もない場所で。
通常マチュピチュトレッキングは1日で完遂することができる短いトレイル。
それを遠くの村から出発して、5日間も山にこもって一人で行って帰って来たと。
しかも本当はもっと長く山にいるつもりだったと。
C「なんで早く帰って来たの?」
S「え~何にもないんだよ、山の中なんて。
ネットも通じないし、誰もいないし。ここにいる意味あるのかなって。
もう嫌になって早く帰ろう!って帰って来た。」とサシ。
何もない、山の中に閉じこもることが私の中ではあまりにも幸せそうで、恍惚なイメージだったせいだろうか、この言葉にしっくりとこなかった。
私がもし、一人で山に入れたならどんな風にするだろう・・・?
まずはテントを張る。
一人用の小さなテントに、マットと寝袋をきちんと敷いて、お気に入りの布でカバーをしよう。
食事を作るためのスペースを確保して、木々を集めて、火を用意する。
一度付けたら消さずにずっと炊き続けるんだ。
近くには川があると想定して、水をたくさん用意しておこう。
そこに泊まる準備が整ったら、鳥の声を聞く。
ただ、それだけ。
そして、それに飽きたら今度は温めたお湯を飲んで、木を使ってスプーンでも作ってみよう。いつかは木のコップなんかも自分で作りたい。
集中力が切れて疲れてしまったら、木の実を取りに行こう。
そこらへんに生えている木の実が最高のスイーツになる。
木の実を楽しんだら、地面に寝転がって、静かに呼吸をする。
木漏れ日の光と、木々の葉が擦れ合う音、せせらぎの音や鳥や虫の声が聞こえる。
その声と、自分の呼吸との音を聞いて意識を遠のかせる。
眠りそうになるけど、眠らない。
いや、寝てしまってもいい。
でも、今自分が自然の中にいてその一部になろうとしていることを感じて喜びを感じよう。
夕方になったら、持って来た缶詰とクッキーでご飯を食べて、そのあとは本を読んで。
星空を眺めて眠る。早朝には起きてまた移動して同じことをする。
それが私の憧れの森での過ごし方だ。
これに釣りなんかもついて来たら最高!
釣りなんてほとんどやったことないけれど。
サシはこんなことも話していた。
S「この旅してる間にいろんな人に会ったよ。それで、たくさん裏切られたり、詐欺にあったりしたから人を疑って見てるよ。
ちかたちのことは前から知ってて安心できるからいいけど、初対面の人はみんな何が目的なのかわからないと付き合えない。」
サシの考え方は一部であっていると思ったし、一部で行き過ぎているとも思った。
確かに、旅をしていると変な人に合うこともあるし、「お金目当てに近づいてくる人」もいればただ寂しくて擦り寄ってくる人もいる。
サシの目は前よりも数段鋭くなっているように感じたし、人に対する期待よりも懐疑心の方が勝ってしまっている寂しさも感じた。
それでもおおらかで優しげな声のサシの周りにはすぐに人がよって来ていたけれど。
目指していた場所に到着した。
最後、目の前に広がる階段を登るのには、嫌気が刺したけれど、目の前にある頂上に登らないわけはなく。
5000mまで登っても周りは緩やかな傾斜が続く山だった。
一部、雪の残る山を見て、サシが言った。
S「ああ、やっぱり山は雪があったほうがいいよね、山って感じする!」
それって、インド人だから?ねえ、サシ、聞けばよかった!
暑い国から来ていると山と言ったら雪山になるの?
確かに5000mまで登って来てるのに、雪が全くないのも不思議な感じはしたけれど。
そして、レインボーカラーの山は本当に、様々な色の連なりになっていた。
2018年5月の出来事。
これを書いているのは12月。
ね、もうこれも素敵な思い出になっている。
一瞬一瞬が、掛け替えのない時間になって、大切な思い出になった。
今はインドで仕事をしているサシ。
きっともう一度会える日を楽しみにしているよ!
ありがとう!
もう少しだけ、3人の旅は続く・・・