私たちの旅はタイからカンボジア、そしてラオスのチャムパサックから移動し、パクセへ。
このあとはベトナムへと移動する予定でホテルを尋ねるとそこには英語の通じるスタッフがいなかった。
言葉が通じないのにお互い根気よくジェスチャーやトランスレーターを使って話をした。
が、1時間話し合った後でも内容がうまく伝わらなかった。
ホテルはいいとして予約を取りに行こうと街に再度出ることにしたが、オーナーもどうにか力になりたいという感じだろうか。
英語が少し話せるというスタッフを連れてくると再度話し合いに。
さらに英語が少しわかるというトゥクトゥクドライバーが来て話す。
と、ここで改めて次の目的地を聞かれたのでここはCの独断でダナンを目指すことに。
ダナンの周りにはフエ、ホイアンという観光名所が連なっているがダナンを選んだのはフエは北側にあり遺跡をメインとするため。
ホイアンはダナンからバイクや車で移動して日帰りできるとの情報を得ていたのでこちらはダナンから行けばいい。
そうしてラオスのパクセからベトナムダナンへのバス移動の予約を依頼していたわけだが、ここで私たちの大きなお願いの一つが、「VIPバスに乗りたい」ということ。
このVIPバスは縦に細長く伸びるベトナムの土地を移動するのに最適。
VIPバスを指定した意味はラオスの普通のバスに乗るとかなりボロくて狭い上に乗り心地が最悪だから。
そしてVIPバスであれば日本ではあり得ない寝台型の座席で快適に移動できるとのレビューを見たから。
そしてVIPバスを連呼して依頼を続けると、ドライバー、ホテルスタッフ、オーナーのみんながokだという。金額は2人で180,000kip(2300円程)。安い。
明日の朝4時にロビーに来れば同じドライバーが迎えに来てバス停まで連れて行く。
バスはダナンまで行くので朝必ず来てくれれば大丈夫だ。
とそんな話で内容がまとまった。話がまとまるまでにほとんど半日以上を費やした。
それでもチケットがあるわけでもないし、明日の朝必ずドライバーが来てくれるという確証もなかったので本当に大丈夫なのかどうなのかは分からず不安が残った。
とはいえ、根気よく私たちと話してなんとかしようとしてくれた姿を見ているともう彼らの言葉を信じるほかないという感覚にもなり結局その夜は早く眠るだけが私たちにできることだった。
朝3時半。あたりはまだまだ暗い中目覚ましに起こされて目を覚ます。
眠気は強かったが準備をしてロビーを降りると昨日のドライバーが午前4時ちょうどに迎えに来た。
パクセに来てトゥクトゥクやトラックバスに乗ったが今回のトゥクトゥクはかなり古い。
ライトは塵や埃にまみれてモワンと光が柔らか。
ガタガタカタカタと部品同士がぶつかり合いエンジンの音と合わさり昭和っぽい雰囲気だった。
バス停自体はH氏も調べていたというが一番近いはずのそのバス停はスルーしてさらに離れたバス停へ到着。
そして、ダナンに行くのか?とそこにいた者たちに聞くと行くという。
ただし値段が上がった。2人で180,000kip(2300円程)だったのが220,000kipに。
空かさず「そんな金は持っていない!180,000kipじゃないの?」と聞くと仕方がない!とラオ人同士で言葉をかわすと結局180,000kipに収まった。
急に釣り上げておいてすぐに下げるとはどういう根性なのかと不思議になるがとりあえずはバスに乗れると安心し、どのバスなのかと聞くとあの小さいバスだという。
これか!全然VIPバスじゃないよ!
あ~辛い。悲しい。こんなバスに詰め込まれるのか。と落胆しつつも席を確保してコーヒーでも飲んでおけと言われたので言われるままにラオスコーヒーを飲んでバスの出発を待った。
バスは5時出発の予定だったが全く出る気配がない。
こういうバスはかなり予定にルーズだし、休憩がないとリサーチしていたのでこれでもかと短時間にトイレに行きまくり、出せるだけ出しておけ!とお腹に指令を出してトイレとバスを行ったり来たりした。
6時前、ラオスでは当たり前のことのようだが何の説明も全くないまま出発した。
そしてこのバス、映画に出てくるような猛スピードでラオスを駆け抜けて行った。
もちろんバスの設備レベルはかなり低いので乗り心地は最悪。
狭い、痛い、揺れる。の3拍子揃ってる上にかなりの豪速で駆け抜けているので頭や体があっちにぶつかりこっちにぶつかり、と大変な思いをした。
そして運転手はおそらく自身で選曲したのであろう音楽をけたたましい程の大音量で流した。
そのクラシカルで美しい歌声と豪速で移り変わる風景によりこれが走馬灯のように見え、言い方を変えればコミカルな恐怖感があった。
危険運転と言われても仕方がないような運転だが、無事にラオスの出国オフィスに到着。
ラオスの入国審査ではかなり手間取らされ、イメージは最悪だったのでここでも何か物やお金、時間を取られるのではないかと警戒した。
ラオスの出国審査はかなり入念で、用済みで出て行く者たちの何を調べているのかと不思議になるが20分くらいはパスポートをこねくり回しながらジロジロこちらを見たりしていた。
気色の悪い人たちだ。
そうこうしているとやっとパスポートが帰って来たので今度はベトナムオフィスかと思いベトナムオフィスを探すがどこにも見当たらない。
おかしい、と思い聞いてみるとバスに乗って待ってろとのこと。
バスに人が戻りさあどうするのかと見ていると、ベトナムオフィスはここでは無いようで、さらにバスで進んで行く。
それではこのラオスとベトナムの間は誰の土地で私たちはどこの国にいることになっているのか?という疑問が浮かんだが答えはわからなかった。
とにかく到着したベトナム入国審査でパスポートを渡し、すんなりスタンプをもらい荷物検査を受けるとまたバスに戻った。
この後バスは山形の道を進みかなり際どい道を通っていたが相変わらず変わることのない恐怖心をそそる音楽と共に豪速で突き進んだ。
そうして気づけば15時、フエに着いたとここで乗り換えを言い渡された。
「フエに着いた?乗り換え?ダナンに着く予定じゃなかったのかよ!」と不満を垂れても誰もダナンへは連れて行ってくれないのでバスを乗り換える。
ここでかなりの人数がバスに群がってくるのだがこれは少しでもいいからとにかくチップをもらおうという人間の集まり。
私が下ろした荷物を勝手に持ち上げ「俺が運ぶ!」「俺が運ぶ!ダナン行きのバスはあっち!」と言って勝手に運んでしまう。
そうしてバスが出ると、今度はバス代を請求された。
すでにダナンまでのバス代を払ったと思っていた私たちは払ったと言ってみるものの車体が違うので仕方なくバス代をさらに払う。
が、この代金をとる男がまたひどい。怖くて車内の写真も撮れなかった。
いくらか?と聞いているし、VDN(ベトナム通貨)を持ち合わせていない我々に言葉が通じないことを理由にヒステリーを起こしてぶちギレてしまい、H氏の財布からお金をふんだくろうとする始末。
6,7年前にもベトナムには来たことがあったがこんなヤバイ人がいるの?ベトナム。こわいよ~。と思いながらも他の乗客に助けてもらいながら支払いを済ます。
到着直後ベトナムの天気は雨。東南アジア特有のジメッとした空気が垂れ込めていた。
バスが終点に到着すると、タクシーのドライバーが例のごとく群がる。
「そんなに迫り来なくてもちゃんとこちらから声を掛けるから一度待ってくれ!」と言うと笑っていたが、毎回毎回、東南アジアの国のタクシードライバーは例外なく押しが強い。本当に勘弁してほしい。
荷物を降ろしてやっと行き先をiPhoneに表示させるとタクシードライバーに確認。
C「いくら?」
ドライバー「メーター使うから大丈夫だよ」
C・H氏「あ、そう。」
やっとメーターをまともに使う国にきたか!と思った。
タクシーは渋滞の中を進み海側へと進んで行く。
ラオスのようなゆったりした雰囲気はもうそこには無くて、遊園地のようなビガビガの電飾に無数のバイクの群れが連なった。
そして大きな橋を渡りきると辺りはリゾートホテルだらけになった。
時間も時間だったので夕食に出る。
適当に歩き回ると、ビーチ沿いのせいか海鮮類を売りにした店が並ぶ。
もうどれに入ったら良いかわからないのでとりあえず賑わっている店に入ることにし、適当にプラスチック椅子に座ろうとする。
ベトナムのこの手のレストランの椅子はなぜかやたらと小さい。
子供用か風呂用の椅子のように小さい。
座ろうとすると、違う、こっちだ!と店員に戻され桶の中の魚やらを選べと言ってきた。
そうして私が魚やら貝やらを見ていると、後ろでH氏がなぜかビールを片手に乾杯してるではないか。
何が起きたのかと見ていると現地の人たちが仕切りに「飲め飲め、乾杯~!座って!これ食べて!」とH氏に勧めている。
新しい土地に来て警戒心マックスのCは毛を逆立てながら彼らの動きをじっと見つめていたが、H氏の動きをみるにこれ以上何も起きなそう。
あるとしてもここの食事代を取られる程度かな・・・?
と一瞬の間にあれこれ考えながら見ていると、こちらにもビールやらつまみやらが回って来てこれはもう断れない状態になった、と仕方なく一緒に座る。
が、どうやらこの人たちは英語を話さないようで、これまたジェスチャーで会話が進んだ。
適当にビールやらつまみも頼んだのだが、何が食べたいのかと聞かれ、適当に「野菜と貝!」と答えるといつの間にか注文し、いつの間にかテーブルに並んだ。
とにかく暑いのでビールもスイスイと飲みながら話していると、これもまたいつの間にかビールが注ぎ足されていた。
そうして話していると、この辺りに住んでいることや一人はタクシードライバーで、一人はUBERのドライバーだと言う。
彼らは結局私たち二人によくしてくれただけで何も取ることも詐欺ることも、何かを欲することもなく帰って行った。
「旅で話しかけてくる親切顔のやつは大体詐欺師。」と思っていたが、そうでもないらしい、とここで早くも通説が裏切られてしまった。
次の日も別のベトナム人だらけのローカル居酒屋に入って注文したものを待っていると、隣に座っている3人組が声をかけてきた。
「どこから来たの?一緒に飲もう」
こちらもまた英語は特に使えない。
また、適当な話をしながら飲んだのだが、ビールをやはり奢ってくれて最終的に私の電話番号をききだそうとされた。
生憎電話は持っていないので御免被りたいと、伝えるとなんだよチキショー顔もせず笑っていた。
ベトナムのおじさんたちはちょっとした助平心があるようだがそれ以外は本当に優しくて、50~70円のビールをケースで頼んでそれをみんなでバッカバッカ飲む景気のいい呑んべいスタイルのようだ。
これは幸先いい。ベトナムは期待ができると胸が膨らんだ。