木の上にある危険な茶室に空飛ぶ泥舟、そしてユニークな資料館。そこは長野県茅野市、諏訪大社本宮の近くに神長官守矢資料館(じんちょうかんもりやしりょうかん)という資料館。
わざわざそれだけを目当てに行くところでは無いかもしれないが、ついでに行くには丁度いい珍スポットだ。
屋根から木が突き出るとてもユニークな建物の資料館、茶室「空飛ぶ泥舟」とアメリアTIME誌で「世界で最も危険な建物トップ10」にも選ばれた、これもまた茶室「高過庵」(ちなみにトップはイタリア・ピサの斜塔)そして半分地面に埋まっている、またまた茶室「低過庵」が2017年完成した。
一体この変な茶室が3つもある資料館は一体なんなんだ? これらはこの地で生まれ育った著名な建築家「藤森照信」さんの作品。資料館は藤森照信さんのデビュー作だそうだ。
突き出ている4本の木は地元原産の木で、諏訪の自然と昔からの信仰を表しているそう。内装はワラなどを混ぜた特別調合の壁土を天井、壁、床に塗っていて昔の家のような懐かしさ。自然素材を多く使用したこの資料館は奇抜な見た目ながら諏訪の自然に馴染んでいる。
資料館自体もなかなか興味深い。古代から諏訪大社上社のひとつである「神長官(じんちょうかん)」を明治時代まで務めてきた守矢家で代々伝わる守谷文書や武田信玄の古文書などを公開している。
神長官には呪術の力があると信じられており、その祭祀に関する秘法を一子相伝の口伝によって76代に渡って明治まで受け継がれた。
そんなミステリアスな神長官、守谷家の資料館、展示物自体の数は多くないが、展示物がなかなかのインパクト。
串刺しのうさぎや鹿や猪の頭部がずらりと並ぶ。少し奥には耳が裂けた鹿の頭が台においてある。そして鹿の脳と肉を混ぜたものと鹿やうさぎの肉を煮て味付けしたというお供え物のレプリカ。
これらのおどろおどろしい展示物は、諏訪神社上社において、御柱祭と並んで重要な祭礼である「御頭祭」の時に用意されていた生贄の復元展示。この「御頭祭の再現」は江戸時代の民俗学者・菅江真澄によって描かれたスケッチを元にして作られたそうだ。
その奥に武田信玄や真田昌幸が書いた書状などが展示してある。
そして資料館を出て奥に歩いていくと、藤森照信さんの作品、浮遊する茶室「空飛ぶ泥舟」と木の上の茶室「高過庵」がある。
細川元首相の茶室を設計したことがある藤森照信さんが、個人的に茶室が欲しくなって実家のは建てたものだそうだ。
普段はハシゴは外されていて中に入ることは出来ないが、年に一度の公開日にだけ入ることができる。近くに2017年に完成した半分埋まった「低過庵」がある。
田舎の風景に突如現れるジブリ映画にできてきそうな建築というかアート作品。しかも特に説明をするような看板の類もないのがまた良い。
海外からも資料館とこの茶室たちを見にくる人もいるそうだ。資料館にはずっと付き添いで「御頭祭」や展示物、建築について説明してくれる気のいい館員さんもいて、中々楽しめる。
諏訪大社に行った時には是非立ち寄ってもらいたいスポットだ。