シェムリアップは思いの外居心地が良かったせいもあって6日間も滞在していた。
何が良かったってご飯が安くて美味しいこと。
特に屋台のご飯が美味しくてもやしみたいな形の粉っぽい麺が入った屋台飯が最高だった。
ホテルの前の孤児院の子供達が元気で可愛かったこと。
クリスマス1週間前にはクリスチャンの人が集まって大きなパーティーを開いていた。
その中の年長者にお祝いの品をあげたり、音楽を大音量でかけて11時ごろまでみんなでドンチャン踊ったり騒いだりしていた。
それに夜の賑やかさがおもしろかったからだ。
夜になると街が一段と元気になっていた。
逆にちょっと嫌な面もある。
シャワーからでる水が鉄臭いのだ。どのくらい臭いかって頭を洗うと髪の毛が鉄くさくなるくらい臭い。
そして一度洗濯のために水を洗面台にためてみたところ・・・
白い洗面台がみるみるうちに茶色く濁ってしまった。
やっと気付いたのだが、雨が降らない寒気は水をどこからか買ってタンクに補給し、それを使っているわけだがどうやらそのタンクが錆びていたらしい。
アジアに来てみてお湯が出ないことはよくあったが、鉄臭いのはなかなかの打撃だった。
そんなシェムリアップを出て、私たちはラタナキリという田舎町へ向かうバンを予約した。
バンでの旅は15時間ほどの長旅になると聞いていた。気合を入れてバスに乗り込む。
如何にかこうにか体を痛めないようにとストレッチして小さなスペースで状況に抗う。
しかしこのバンでの旅は本当に辛く厳しいものだった。
何が辛いって右側の席に座ったところ車の進行方向の影響で太陽の光と熱を直に受ける場所だったからだ。
カーテンなどなく、その上エアコンは付いたり消えたりする。
電子レンジの中に入ったかのように熱く、まるで光と熱の拷問を受けているような暑さ。
何もしないと辛いという気持ちしか湧いてこないのでなんとか気を紛らわそうと予めkindle fireにダウンロードしていた映画を見たりして時間を潰す。
これでなんとか時間を過ごすことができた。
そして、予定にはなかったバンの乗り換えがあり、そこでランチをとった。
単なるツナのサンドイッチが2.5ドル(300円)もして、高すぎだよ。と文句を垂れると店主は「リアルプラ~イス♪」とほざいていた。
だんだんと気分が落ちていった。
乗り換えの後いくらか走るとまた、停止。今度はなんだ?
と待っていると買い出しに来たのかと思われる大荷物を持ったおばちゃん集団が入場。
このばば様がとにかく大声で喋る。
「私たち老体なんだから、ちょっとあんたたち後ろに座りなさいよ。」と恐らくカンボジア人のカップルを席移動させる。
すごい迫力。
食べ物をパクパク、大盛り上がりでピーチクパーチク、ガッハッハと大笑い、車全体がカンボジア語と変な甘い匂いに包まれる。
後ろに座ったおばあちゃんは景色が見たいのかカーテンを私の方へと追いやる。
遠慮なんて言葉はどこにもない。
何処の国でもばば様たちはうるさくて強い。本当にこれは万国共通らしいとまた一つ学びになった。
疲れてたおかげでうんざりしているとものすごい小道に入っていき、その先には何故か僧と坊主のばあさんたちがいてそこでぞろぞろとばば様たちは降りていった。
車の中はカンボジア人のカップルと私たちだけになってまた静けさが戻った。しばし安堵。
さらに1~2時間その車に乗っていると突然、「Ratanakiri!!!Ratanakiri!!!」と言われここが目的地だと知った。
時刻は16時。バスに乗ったのは朝9時ごろなのでバンの旅は7時間くらいで終了した。
こんなことあるのかと不思議になるほどの短い旅に思えた。
降りるとトゥクトゥクのにいちゃんとゲストハウスの客引きが5人くらいきて、口々に喋り始める。
彼らは営業トークを勉強しているのか、「まずは俺に1分くれ。」と一言断ってからたくさんの写真を見せながらトークを進めて行く。
誰を選んだらいいのかわからないでいると、突然颯爽とバイクタクシーと女性が現れた。
謎の女性「あなたたち、コートヤードホテルに予約している日本人ね?」
H氏・C「え?そうだけど。」
謎の女性「私そこの店主の友達なんだけど、あなたたちを迎えに来たのよ。」
H氏「そうなの?じゃあこれは無料?」
謎の女性「いいえ、$1.5よ。」
H氏「いいよ、じゃあみんなごめんね、君らは$2って言ったけど彼女が一番安いから。
客引き集団「なんだよ予約してんのかよ、先に言ってくれよ~」
とよくわからない小芝居を見てとにかくバイクに乗るとホテルにすぐについた。
ホテルについて荷物を部屋に置いてチェックインに行くと店主のおじさんが地図を出してくれてこの街を拠点に何が見れるかどんな場所なのかどういう距離感なのか事細かに説明してくれた。
到着したらまずは散歩。私たちの行動パターン。
ぶらぶらしてみると屋台がたくさん。マーケットもあった。
シェムリアップにもあったがもっと泥臭くて生臭い気がした。
肉屋さんがあり、魚屋さんがあり、新鮮な野菜があり。
日本みたいに業務用の冷蔵庫冷凍庫なんてないので生物がそのままそこに置いてある。が、とにかく新鮮なのでしょう。
生きている魚たちもいる。
野菜も艶がよくて形も綺麗なものを敷き詰めるように並べてあるのだ。
鍋を置いてる店もあり見ていると、牛のスープだと教えてくれてビニール袋に入れて口を縛って客に渡していた。
家で器に移して食べるようだ。とっても美味しそうに見えたが器が無いので諦めた。
こういう場所の現地の食べ物が一番安くて美味しい。
衛生的に不安とかよくいう人がいるが、ここにいる人たちが食べているんだから大丈夫。
毎回のようにそこのご飯で体調を悪くする人がいるならその店は潰れてるはずなんだから。
日本でも地方に行ったらその場所のものを食べると美味しいのと同じことである。
ちょっと見た目は悪いがそれだけである。
お腹が減ってその場で食べられる場所を探して歩いていたが屋台が見つからない。
歩いても歩いても見つからず、やっと見つかった屋台で調理をしている青年に「そのヌードルはいくらか。」と聞くとどうやら英語がわからない様子で奥から女の子がやって来て通訳してくれた。
そして青年は通常通りの金額を彼女に伝えていたようだが、その女の子が一言二言青年に言うと私たちに「$2。」と言って来た。
$2は高すぎる!とH氏に言うと「じゃあ、やめる?」と聞いて来た。
私一人であればここからバトルを始めるところだが、食べるかやめるかの二択になってしまったので食べないという選択はしたくなく仕方なく一人$2を払うことにした。
ここで戦っていればと後悔する味で本当に美味しくなかったので、無言で掻き込んだ。
食が楽しみの一つなわけでこれには本当に腹が立った。
昼からの流れのせいかもうこの地域はさっさと出るべきだと考えてた。
一泊600円程度のホテルもなぜかドアがガラスで中が丸見えになりがちであったために最悪な気分で就寝した。
3泊も予約していたので翌日私たちは2kmほどと聞いていた湖へ歩いて行くことにした。
歩き始めて見て地図を確認すると、どうやらそこまでは2kmではなく4kmほどあることがわかった。
ホテルのオヤジの話を疑う必要はなかったはずだがどうも彼の記憶は間違っていたらしい。
暑い中、歩き続けた。特に面白いこともなくただ、歩いた。
地元の人たちも全く歩いている人がいないのでバイクで道を行く人たちが私たちをジロジロ見ながら過ぎ去って行った。
それくらい誰も歩いていなかった。
歩き続けていると店がいくつかあり、そこで昼食を調達しようという話になった。
しかし入ると食事は愚かパンすらもなく、手に入ったのはウエハースとスナックのみだった。
そこからさらに歩くとフランスパンを置いている屋台を見つけた。
カンボジアはその昔フランスの保護国だったこともありほんのすこしではあるがフランスの食文化が根付いているようである。
そう思いながらサンドイッチを注文すると、なぜか串に刺さった具とフランスパンを油に投入。
揚げパンになってしまった。
そしてカンボジア風魚の練り物の揚げ物と人参とおそらくパパイヤの千切りを挟みチリソースをかける。
どう見ても脂っこい。。
が、これも買ってしまったら仕方がないのだ。あとで食べるしかない。選択肢はない。
味はビミョーだった。もう食べないと決心したほど。
1時間半ほど歩いた先にやっと看板が見えた。
ここで$1払えというのでそれを支払って、中へと進む。
この場所は昔火山の火口だったそうで、だから湖がまん丸の形をしているのだとか。
神聖な場所ということでここにはお坊さんもいた。
ビキニで泳ぐなとの禁止事項もあり、そこに来た人たちは皆ショートパンツにTシャツで飛び込んでいた。
禁止事項は他にもあって、酒・トランプ(ギャンブル)なども禁止されていた。
湖の形なんて気にしたことがなかったのでそこまでの感動はなかったし湖に入ると寒かったのですぐに泳ぐのはやめたが、静かで美しい場所だった。
そして、湖の周囲を一周してみることにした。全体をだいたい見渡すことができるサイズだった。
歩き進めて行くと犬に出会った。犬は私たちの後ろを歩いていた。
私が後ろを振り向くと歩みを止めてこちらをみる。
まるで「だるまさんが転んだ。」をやっているかの様な要領で動かなくなる。
どうやら警戒している様子。
そのまま歩みを進めていると人間の声がした。
ちょっと早足でその声の元へ行ってみると、なんともワイルドな身なりの男がいた。
そしてどうやら犬を呼んでいる。
何をしていたのかわからないが斧の様な刃物を持ち、竹でできたカゴを背負い、ショートパンツにTシャツ、ボサボサの髪で歩いている。
こちらと目は合わさない。
現地の人でもこんなにも野性的な人間は見たことがなかったのである程度の距離感を保ちながら後ろを歩いていたが、ある瞬間に突然犬も男の姿も見えなくなった。
よく見てみると竹林のいくつかの場所にトンネルの様にかき分けてある場所があり、どうやらそこに入って行った様子。
映画となりのトトロの世界にでも入り込んだ様だ。
不思議な出会いだったが追いかけるのも悪いのでそのまま湖の周りを一周してホテルへと戻った。
昨日は美味しくない高いご飯だったので今日は美味しい安いご飯を!!!と二人意気込んで探すと大きな通りに昨日は見なかった屋台の列を見つけた。
なんとも美味しそうな肉の塊を下げているお店があり、そこで恰幅のいいオヤジが煙たそうな顔をしながら肉を焼いている。
焼いているのは肉だけだがオヤジは忙しく動く。タレをつける、火に戻す、ひっくり返すなどして肉を調理していた。
いくらか聞くと10,000リアル(約300円)。
「たっけ~」と H氏。じゃあいくらなら安いんだい!と思われるかもしれないが、ここまで我々はシェムリアップで$1(約120円)約飯を毎食の様に頂いていたのでこの値段には驚いてしまった。
それで仕方なくまた歩きながら店を探していると、やっと小さな店を見つけ今は焼きそばしかないという様な事を言われた。
仕方なくそこでそれを二つ頼もうとすると二つで$4だという。
またふざけたこと言って。と思い英語を話せない店の女性とバトルを始めた。
私は二つで$3ならまだいいとするとして、「$3!!」としか言わず、それしか書かない。
彼女は「1つ$2だから2つで$4だ」としか言わず、何分か続けると誰かを呼びに行った。
どうやら店主が別にいるらしく男が出て来て、私を見て何かいう。
それでいくらか改めて聞くと6,000リアルという。
4000リアルで$1ほどなので一つがだいたい$1.5に収まった。本当は$1でちょうどいい値段のところだと思っていたがここは向こうが折れたのでこっちの勝ちである。
$3で夕食にありつけた。目玉焼き月の焼きそばだった。すごく美味しく感じた。
物価とものの価値にあった金額でないと満足できないのだと再認識した。
その後肉のことについて考えた。
カンボジアに来てから肉という肉を食べていない。
貧しい国だからだろうか、やはり肉は高いらしく、大きな塊では出てこない。
日本でも大きな牛肉の塊肉は高いが、豚バラや鶏肉であればこれでもかっていうサイズで出てくることもあるがそういうサイズの肉はない。
肉入り、と書いてあってもだいたいが親指の先くらいしかない小さな小さな肉。
それで高い!と言われた肉について考えH氏にこんな話をした。
C「あのお肉なんだけどさ、私たちそれぞれ一つ食べ物頼んでさらに何かいつも食べるよね?」
H氏「うん、お腹いっぱいにならないからね。」
C「じゃあさその追加で食べる何かをあのお肉にしない?だって二人で割ったら一人150円でしょ?ちょっとお高めかもしれないけど、二人で食べるって考えたらそこまで高くないよ?」
H氏「確かに・・・そうだね。」
C「じゃあ明日あれ食べる?」
H氏「食べちゃうか!」
C「そうしよう!ビール買ってって、お肉買って近くの屋台でチャーハンとかもやってたしそこで食べよう!」
成功。H氏も炭水化物、野菜ばかりのご飯に飽きていた様でこの考えには乗ってくれた。
しかし300円程度のことでこんなにも考える日が来るとは思っていなかった。
翌日私たちは予定通りにその屋台に行き肉を買い、チャーハン、そしてフォーの様なヌードルスープを頼み50セントビールで乾杯した。
この時までその肉は豚だと思い込んでいたが食べてみると牛肉で、周りだけが焼け焦げているが中はほとんどレアの状態。
食べてみると赤みの肉らしい肉!の味がして牛肉だと気づいた。
脂身がほとんどなく赤みの引き締まったお肉。
久々の肉らしい肉に私たちは感動してモリモリと食べた。
若干硬いな、という感じはしたが、こんな美味しいものがあるのか!と思うくらい、その肉は美味しかった。
それにチャーハンやヌードルスープもそれぞれ$1.5と観光客プライスだとは思ったが美味しかったのでここにいる間はほぼここに通うことになった。
「美味しくて安い」は他のものには変えがたい価値がある。(心は学生気分)