もう、嫌になる・・・。と思いながらも前に進むしかないので、できるだけ歩幅を大きく、できるだけ早く。前に進む。
Harder, Better, Faster, Stronger!Daft Punk言葉が頭に浮かぶ。
何も考えずに。とにかく前へ、諦めずに。進め!
この先はどうかなんて考えない!ただただ進め!と心で唱える。
たまにぐらついた石があったり、滑ったりすることもあるので常に足元を気にしにつつ、とにかくジヌーに着きたい!そんな思い出歩みを進めていた。
だが、せっかく登ったはずのあの道のりを川を超えるために全部降りてしまったので、次に見えているあの山を登らなければチョモロンにはつけない・・・。
わかってはいたものの、案の定・・・急な角度の登り階段、登り坂が目の前に立ちはだかった。
もっとゆるい感じの道の開き方あったんじゃないかなあ?と言いたくなる道の流れ。
一番上まで行ってもそこは目的地のチョモロンではない。ジヌーだ。
もうあと一息。だけど時刻は既に4時。
小休憩を挟みながら登っていく。もう少し、もう少し。
ただ、それだけ頭に浮かべ足を前に出して道を進んだ。
そういえばの話だが確かトルカのあたりだっただろうか。
一匹の犬と出会った。お腹が空いてるように見えたので、持っていたスナック菓子を目の前に置いて見たけど、匂いを嗅いだだけで食べなかった。
その犬は私たちが行くのを眺めていたのだろうか。そのまま動かなかった。
そして日没前ギリギリになってジヌーに到着した。
ホテルは良さそうなものはもうほとんど満室で私たちはジヌー村の真ん中より上にある賑やかなホステルのようなノリのホテルに泊まることになった。
この時期はそこまで人もいないようで、部屋はシングルの4人部屋が充てがわれた。
宿泊する予定が無ければ、そのまま通過することになっていたジヌーだが宿泊する、となると楽しみにしていたアレが待っている。
アレ、というのはそう、温泉。
日本から出るとお金を出すか、どこかの秘境まで行かない限り湯船には浸かれない。
これは海外のどの国に行っても同じで、世界をめぐる中で日本の入浴という文化がどれだけ異質なものか知った。
そうしてお金を出すか、秘境に行くかの一つ、秘境まで来たので私たちは湯船に浸かることにした。もちろん、全裸ではなく水着着用で。
Jinuのロッジがあるのは山の頂上付近。
そこからロッジのスタッフから聞いた通りの道を歩いて行く。
ロッジとロッジの間を抜け、何頭もの馬の横を通り過ぎ、さらに山道を降りて行く。
ビーチサンダルできたのが馬鹿だったと気づくまでにそう長い時間はかからなかった。
だって長い山道だったんだもの。
川が流れているすぐ横に温泉があるのが見つかった。
温泉が貯めてある箱が二つと、シャワーのように使える温泉の口が3つ。
シャワーのようになっている部分からもお湯が出ているので、ここで体や頭を洗いお湯に浸かる。
男性はハーフパンツのみで女性はショートパンツに半袖Tシャツを着たままといった服装だった。
私はこれを忘れてしまっていたので水着とTシャツのみで入らせてもらったが、ネパールでは首元(鎖骨~胸元)、また脚を出すことが慣習的に恥ずかしい行為だと考えられている。
この二つの部分を出して歩くことはパンツとブラジャーだけで歩いているのと同じなのだとか。
私の父も私が小学生か中学生の頃に流行ったキャミソールを着用して外出しようとする私を見て激怒していた。
ネパールは古風な習慣が残っている。
と、そんなわけで日本と全く同じとはいかなかったが、ちょっとぬるい温泉を楽しむことができた。
こう言ってはなんだが、日本の温泉の温度のちょうど良さ(熱すぎる時もあるけど)、清潔度、使い勝手の良さと言ったら「最高!」以外に言葉が見つからない。
本当にありがたいものだ。日本の温泉に入れるときには感謝の念でお湯が金色になるかもしれない。
温泉から上がり、山を登るとあたりは真っ暗で夕食の時間になっていた。
そこでヌードルが食べたくなった私は即席ラーメンを頼む。
H氏もそれじゃあ、と一緒のものを頼んだ。
そして出てきたものを見て落ち込む。卵ヌードルと書いてあったものは本当に卵と即席麺しか入っていなかった。
仕方がないのでそれをゆっくり、大切に何度も噛んで胃の中に納める。
ああ、どうしてこんな粗末なご飯を頼んでしまったのだろう。せめてフライドヌードルか、フライドライスだっただろう、そうすればもう少しマシな量を食べられたかもしれないのに。
悔やんでも後の祭り。私たちに追加で注文出来る余裕はなかった。
まだ腹3分目くらいだっていうのにそのまま部屋に戻った。
仕方がないのだ。頂上の方まで行ってご飯が食べれないだとか、戻るまでにお金がないなんてことになったら困る。
そんな気の毒そうな私たちに気付いた店員にも「お前たち、金が無いのか?そんなんじゃ足りないだろう?」
H氏は最悪日本円ならあると言っていたが、結局$なら変えられるけど円は変えられるわけもなく、予算は増えなかった。
しかも持っているのは1万円札のみ。この地域で一万円という見たこともない通貨の大金を両替してもらえるとは到底思えなかった。
今日も朝になり7時ごろには部屋を出た。
チェックアウトの時にやはり朝食は食べていかないのかと声をかけられたが、ここでも断りを入れて、先を急いだ。
PothanaやTolkhaまで見られていた畑はどこにも見えなくなり、本当の山道となったJinuの道を頂点から今度はまた下って行く。
まずは昨日到着予定だったチョモロンを目指して歩いて行くのだが、こうもまた下りの階段が続くと根の方から心が折れて行きそうになる。
C「ねえ、ここでこんなに下っちゃったらさあ、絶対また登らなきゃいけないってことでしょ?」
H「だろうね、目指してるのは4000m級だからね。登ることになるんだろうね。」
C「チョモロンからは急な登り坂と階段が続くって書いてあったもんな~あ~・・・・。」
ボヤキも止まらなくなる。ただし登りたいと言ったのはこの私。なんだけどね!
そう言いながら、チョモロンの山を目指して今度は下り切った山を登って行く。
息を切らしながら登り切るとやっと、入山のチェックポイントに到着した。
ここで入山許可証にスタンプをもらう。もしものことがあった時、私がこのエリアの中にいることが証明される場所だ。
スタンプをもらうとすぐにまた山道へ戻る。
チョモロンの村はちょっと他の村とは違っていて、大きな村らしい。
このアンナプルナトレッキングに関係するロッジの飲食を競う祭りの広告があったり村の上下にたくさんのロッジがあった。
下へと続く階段にはたくさんの水牛がたむろし、それを避けては通れないほどの牛の糞尿もあった。
こちらの人たちは糞尿の掃除もしないらしい。強烈な匂いが続いた。
急な階段を下り終えると一息つく。
荷物を背負った体ではそう簡単に上り下りしてそのまま進むということはできなかった。
一息ついていると、1人の男性とネパール人の荷物持ち兼ガイドの女性が一緒に付き添っていた。
男性は両手に杖を持ち、歩みはかなり緩やかだった。
歩き方に足、もしくは腰にびょうきがあることが見えた。
「Hi」挨拶を交わすと穏やかな笑顔で返してくれた。
ああ、こんなに大変なチャレンジにも病気でも、不自由な体でも見て見たいとトライしにくるんだな。
距離が長いし、必要日数も長い。それにどの村にも快適なロッジがあるとも限らないので、どこまで行けるかは本当に体力・天候次第でかなりシビアな戦いなんだろう。
それでもその不自由な体でも乗り越えて行こうとする人がいるんだなあ、思うと感動した。
この不自由のない体でさえ、延々と続く階段には嫌気が刺しそうになるし、スピードを出して行きたいと思うのに、きっと自分の体と相談しながら進んでいるんだな。
こんなところまで来るなんて、どんなに大変なことだろう。
まずネパールに行こう!となって実行するまでにどれほど決心を重ねたのだろう。
いつまでも挑戦し続けていたいなんて本当にこれっぽっちの人が実践できることだけど、こうやって本当にやる人もいるのだと驚かされる。
病気をしても、誰が無理といようとも諦めないこと。できるかできないかは人が決めることじゃない。自分が決めること。これは大事なことだな~。
当たり前のことでありながら忘れてしまっていつの間にか諦めてしまう・・・っていうのがよくありがちなこと。
忘れぬように!と胸に刻みまた歩き始める・・・。
チョモロンは入山チェックをすませるとガーーーーーーっと続く下り階段の先に今度は橋があり、それを超えると無限に続く登り階段がある。
くっそーまたか!といらっとするがこれがだんだん腹も立たなくなり、足を見つめてその一歩先をみるようにし、その着地している足をもう一度あげる。下げる。上げる。下げる。の単純作業になっていく。
もう、上のどの辺りまで歩けば頂上なんだろう?なんて探らないことにした!H氏と2人で話しながら行く。
C「だってさ、あの辺まで頑張って行ったら見晴らしのいい景色が待ってる!って思って登って行ったけどさ、何度も行ってみたらそこが頂上じゃなかったもんね!」
H「あはは、そうだね、近くまで行くとまだ全然先があるってわかるもんね。笑」
C 「登りきったかなって前見たらダメだよね、ひたすら前に足だし続けないと。笑」
まだこの時点では余裕があった。
とにかくずんずんと進む。
もう、チョモロンを過ぎて2時間傾斜と階段を登り続けるとシヌワに到着。
シヌワでやっとランチをとる。
今日も例外なくランチはダルバードだ。
ここで気付いたのだが、アンナプルナB.C.の別名がアンナプルナサンスクリット。
サンスクリットの意味は聖域。
山道を抜けていく中で大きな看板があり、そこにこんなことが書いてあった。
「ここからは聖域です。チキンやヤギ、羊のその他の生き物の肉を持ち込まないでください。」
そう、聖域というのは神のいる場所、神聖な場所。だから生き物を殺してはならない。だから殺した肉も持って来ちゃいけない。
これまではMomo(水牛・チキン入り)もあったし、チャーハンにも焼きそばにも水牛の肉をトッピングすることができたけど、ここからはそういうものは一切ない。
チーズ・シーチキンが唯一のタンパク源となった。
それまでも山の中では肉類の値段が上がっていたので安いご飯を求めていた私たちは随分前からタンパク質の摂取はあまりなかったんだけどね!
昼食を終えてまた歩き始めるともう田畑の景色はなくなり、細い山道に変わった。
ここからさらに歩いてクディガル。ここには昔ロッジがあったようだが、今はやっていない。
山道を抜けながら川を超えていく。川の石は大きな岩へと変わり、だんだんと山の上の方まで来ていることを実感する。
Bambooについた頃にはもう夕方も遅めの時間になっていたけれど、この先を急ぎたい私たちは4時前だというのにまだ行ける!明日にはMacchapcchre B.Cに行きたい!
もう夕方になっていたけれど、Bambooを無視して、Dovhanまでいくことにした。
薄暗くなった道を歩いていると犬が現れた。
あれ・・・?この犬。。。前にも見た!
C「トルカであった犬じゃん!可愛いね~!」
H「こんなとこまで来たのか、歩くね~」
どういう場所でどんな風に餌をもらっているのか知らないが、軽やかな足取りで私たちの後を歩いたり、先を歩いたり。
いいペースで歩いて来たようだ。あとから調べたけれど、犬の行動範囲は10km~20km。なかなかの広範囲だ。数日かければ人間と同じくらいの距離はいけるのかもしれない。
Dovhanまでは1時間半と書いてあったな。6時前に着ければまあ、いいのかな・・・。