インドに数ある世界遺産の中でも最も有名なタージ・マハル。正確無比なシンメトリーの巨大な白亜の霊廟は世界で最も美しい墓と言われている。
タージ・マハルはヒンドゥー教国インドにおいて16世紀の初めから19世紀後半に渡って栄華を極めたイスラム王朝、ムガル帝国の第5皇帝シャー・ジャハーンが、1631年に36歳の若さで逝去した愛妃ムムターズ・マハルを埋葬するために建設した総大理石の霊廟。
インド・イスラム建築の最高峰と言われるこのタージ・マハルは世界中から大理石と28種類にものぼる宝石、宝玉を買い集め、それらを加工できる腕利きの職人を招聘、常時2万人の労働力を投入し、22年の歳月を経て完成した。
かかった費用はあまりにも莫大で栄華を極めたムガル帝国の財政が逼迫するほどだった。
皇帝シャー・ジャハーンはタージ・マハルの対岸に黒大理石を使ってタージ・マハルと対になるように自身の墓を建設しようとしたが、さらなる財政難を恐れた自身の息子によってアグラ城に幽閉されてしまう。
以後皇帝はアグラ城からタージ・マハルを眺め愛妃を想いながら生を終えた。
現在、シャー・ジャハーンは愛するムムターズ・マハルとともに、タージ・マハルの地下のお墓に眠っている。
インドの首都デリーから電車で2時間、アグラにあり南北560m、東西303mの敷地に建てられている。庭園や霊廟の両側にそびえるモスクと迎賓館もすべて緻密な計算に基づく完璧なシンメトリー(対称性)。
総大理石で出来ているタージ・マハルは時間帯によって姿を変える。朝は朝靄がかかって薄い青になり、昼間は純白そして夕暮れとともに赤く染まる。
タージ・マハルを囲む4本のミナレット(塔)は少し外側に傾いていて万が一倒れても本体を傷つけないように考慮されている。
また細部にも精緻な幾何学模様に石や黒大理石をはめ込んでつくられる象嵌細工(ぞうがんざいく)やイスラムのアラベスク模様が彫り込まれている。
タージ・マハルがある北インドの季節(7月~9月)は雨季(10月~6月)と乾季の2つに別れる。もちろん乾季がお勧め。乾季の中でも12月~1月の中旬の間に濃霧が発生する場合がある。頻繁に発生するわけではないが、一度発生すると数日晴れないこともあるので、ベストシーズンは12月1月を外した乾季だろう。
インドでも最も人気の観光地であるタージ・マハルは常に観光客で溢れている。タージ・マハルの開演時間は日の出から日没までと曖昧なのだが、昼間と比べて人が少ない早朝がお勧めの時間帯だ。
また満月の前後5日間は事前予約が必要だが夜間観光が可能だ。月光に照らされるタージ・マハルは昼間とは違った顔を見せてくれるだろう。