生きてる金魚を残酷にも閉じ込めて作ったのかと思った。
大分前の話だが、香港のショッピンモールをぶらぶらしていると一角で深堀隆介さんの個展をやっていた。当時は深堀隆介さんを知らなかったので、「日本人の個展かー」と何となく覗いてみたら作品の凄さに度肝を抜かれた。
まるで生きているような金魚たち
器の中に樹脂を樹脂を流し込み、その上にアクリル絵の具で近所を描く、またさらに樹脂を流し込み描く。この作業を何度も何度も繰り返す。
そうすることによって絵が重なり合い立体感がでてくる。その何度も繰り返される工程にり、まるで生きている金魚の時間が止まったような躍動感を生み出している。
その制作方法が分かる動画がこちら
金魚救い
深掘さんはこの作品を思いついた日のことをとても大切にしていて、その日をテーマに個展を開いたことも。
これがその時のエピソード。
ある日、「ああ、もう美術なんてやめてしまおう。」と思った。
自室で、寝転がったとき、ベッドの横にあった小さな水槽が目にとまった。
そこには7年前に夏祭りですくってきた金魚が1匹いた。名前はキンピン(メス)。
たいして可愛がりもせず、粗末に扱ってきたため、水も汚れてフンまみれ、しかし彼女は生き続け、20cm以上になっていた。
僕は、水槽のふたを開け、彼女を上から見てみた。そのとき、僕の背筋がゾクゾクっとした。
汚れた水の中で、赤く光る彼女の背中は、怪しく、そして最高に美しかった。
「この子がきっと僕を救ってくれる。」
そう信じて、赤い絵具を取り出し彼女をモデルに筆を走らせた。楽しい!楽しい!楽しい!そして、あっという間に金魚の大群が生まれた。〈これだ!〉
僕の探していた答えが、ヨーロッパでもなく、アメリカでもなく、まさにこの部屋にあった。
僕は、この日の出来事を「金魚救い」と呼んで大切にしている。
深堀さんは世界的にも有名で、上海、台湾、ドイツ、香港、イギリス、スイス、アメリカと多くの国で個展やグループ展を開く深堀さんの作品の素晴らしさは、世界各国で人々の心を魅了している。
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