個人で行くアンナプルナ・ベースキャンプ(ABC)トレッキング【完全ガイド】

世界中にある数あるトレッキング・コースの中でも最も人気があるものの一つであるアンナプルナ・ベースキャンプ(ABC)トレッキング。7日間~10日間にかけて行われるトレッキングをガイドやポーターをつけないで自力で行くために必要な情報や気になるだろう疑問点をまとめてみた。

なぜABCトレッキングは世界的に人気があるのか?

現地のおばあちゃんと

ABCトレッキングの最大の魅力は進むごとに景色が変わり、夏山から冬山まで楽しめることだ。ネパールの山岳地帯の農村風景から始まり夏山の緑生い茂る美しい風景が、次第に植物がほとんど育つことができない雪山に姿を変える。

そして最後にアンナプルナやマチャプチャレなどの8000メートル級の山々に囲まれた、アンナプルナ・ベースキャンプから眺める景色は息を呑むほど美しい。それは苦労してたどり着いた者にしか味わうことができない素晴らしい景色。

筆者たちは本格的なトレッキングをするのは初めてだったが、ABCがきっかけでトレッキングが好きになってしまった。

ベストシーズンはいつ?

ABCトレッキング道中

奥に見える雪山の麓まで向かう。

ベストシーズンは乾季にあたる3月~5月初旬と秋の9月下旬~11月。1年中ABCトレッキングは行えるのだが、6月~8月のモンスーン・シーズンは激しい雨が降る、降っていなくても空には厚い雲がかかる日が多いので避けた方が懸命だ。

冬にあたる12月~2月はベストシーズンと違って混んでいなく静か。空は澄んでいて美しい景色を拝めるが、雪はもちろん降るし、とても冷える。しっかりした防寒対策が必要だ。初心者は避けておいた方が懸命だ。

難易度は?

休むシェルパたち

休憩中のシャルパたち。レストランやロッジへ物を運ぶ仕事を担っている。

ABCトレッキングには、日程を自分に合うように組むこともできるし、登るのが難しい険しい斜面などはないので、歩くのに多少の自信がある人なら誰でも登れる。

だたし行きも帰りもアップダウンがあり、ずっと階段を登ったり降りたりするイメージなので、心の準備はしておこう。現地のガイド曰く「一歩一歩諦めないで登り続ける気持ちの強さ」されあれば誰でも登れるらしい。

トレッキング中の素晴らしい景色が疲れを軽減させてくれる。70歳を過ぎた人でも平気で登っているくらいだ。

高山病は大丈夫?

ABCトレッキングの道中

ABCとその一つ手前のマチャプチャレBC(Machhapuchhre BC)辺りから空気の薄さを感じ多少の頭痛や息苦しさを感じた。ABCへ向かう時は息苦しさと戦いながら少し進んでは休むという感じで歩いていった。

しかし日数に余裕を持って少しずつ標高を上げていき、水分補給をしっかりすれば深刻な高山病にはならないで済む人が大半だと思う。筆者たちは行きに5日と帰りに3日の合計7泊8日で行った。

ちなみにマチャプチャレBC(Machhapuchhre BC)からABCまでは1.7キロしかないので時間的には一気にABCまで行けたのだが、標高に慣れるためマチャプチャレBC(Machhapuchhre BC)で一泊した。

ガイド・ポーターは必要か?

ABCトレッキング道中

道案内を行うガイド、荷物を運んでくれるポーターは必ずしも必要ではない。筆者たちはどちらも雇わないで8日間のトレッキングを行った。

ABCトレッキングはとても人気のコースなのでトレイルでは他にもたくさんの人がトレッキングをしているし、分かりづらい場所はほとんどない。しっかり整備されていて、とてもわかり易い。

筆者たちはmaps.meとポカラで購入した紙の地図だけで問題なかった。ただし、ガイドがいると道案内だけでなく、ペース配分やロッジや食事の手配を先回りしてやってくれたりするので、少しでも不安があるはガイド、体力に自信がない人はポーターを雇うのも手だ。

筆者たちが見かけたガイドやポーターたちはとても明るく気さくで良い人が多く話し相手としても楽しい人達だった。

かかった費用は?

朝日に照らされたマチャプチャレ

朝日に照らされたマチャプチャレ。とても美しい瞬間だった。

トレッキング中

筆者たちは二人で一日約3000ルピー(約3,000円)が予算だった。これは少し節約ぎみの予算なので山小屋で酒盛りをしたい人や好きなものをたくさん食べたい人はもう少し予算を増やしたほうが良いだろう。

準備

筆者たちは世界旅行中にトレッキングを行ったので、日本から必要なものを全て持ってくることは出来なかった。そこで必要なものはポカラで購入、またはレンタルした。

すぐに乾くTシャツや厚手の靴下を数セットとトレッキングポールなど肌に着くものは基本的に購入。寝袋やバックパックなど買うと高価だがその後使わない物はレンタルした。

細かくは『持ち物』欄に記述するが、ポカラではほとんどのものがレンタルでき、ダウンやTシャツなども素材は本物だがニセアウトドアブランドのものが安く買える。筆者たちは8日間のレンタルと購入した物の合計で約10,000円だった。

服装は?

ABCトレッキングでの記念撮影

暑い夏山と寒い冬山の両方の装備が必要。

筆者たちはベストシーズン中の3月中旬に行った。標高が低いところでは夏山に登る格好だったが、標高が高いところでは完全に冬山に登る格好だった。

冬にトレッキングをする方はもちろんだが、ベストシーズン中でも全ての気候に対応できるように準備をしていこう。

宿泊施設、食べ物、飲み物はどんな感じ?

ABCトレッキング中にある集落

定期的に集落がありそこで食事と宿泊。

ABCトレッキングの道中には定期的に集落があり、集落ごとにレストランとロッジ(山小屋)が何件かまとまっている。

宿泊料金、食事の料金は集落ごとに統一されていて、どこに泊まろうが、どこで食事をしようが料金は一緒。

しかし標高が上がるにつれて食べ物、飲み物の料金が上がっていく。下の方で200円くらいで食べれていたものが、上の方では倍以上になったりもする。

トレッキングをしていると大量の荷物を持った多くのシェルパ族とすれ違う。彼らがロッジまで食料を運んでいるのだ。それを考えると標高が上がると料金も上がる値段設定も納得だ。

またロッジごとにキレイさ共有部分などには違いがあるので体力に余裕があれば幾つかまわり部屋を見せて貰ってから決めるのが良いだろう。

宿泊料金はとても安く1人約200円だった。またロッジが混んでいる場合は相部屋になることも。

飲み物

ロッジのラウンジ

ロッジのラウンジ。ここで食事をしたりくつろいだりする。

ビールなどのお酒やジュース、紅茶などの温かい飲み物なども売っている。オススメはマサラティー。ミルクティーに生姜のかけらなどが入ったもの。冷えた体がとても温まる。

しかし一番大事なのは水。標高は低い場所はペットボトルで水を売っているのだが、標高が上がると環境保護の観点からペットボトルは禁止になり、有料で水を容器に入れてもらうことになる。

トレッキング中の水分補給は必須。お湯も入れれるので、水筒がオススメだが、最低でも空のペットボトルを捨てずにとっておこう。筆者たちは節約の為、水は買わず、水道水に念の為、浄水タブレットを入れて飲んでいた。

食べ物

ダルバート

ネパールの代表的な家庭料理ダルバート。おかわり自由。毎日必ずお世話になっていた。

集落のレストランには様々なメニューがありパンケーキやフライドライス、ピザ、パスタ、ネパール餃子のモモなど様々な食べ物を扱っている。

中でもオススメなのはネパールの代表的な家庭料理「ダルバート(Dal bhat)」豆のスープにカレー味の野菜などのおかずに漬物とご飯の定食。しかもおかわり自由。食べ終わる頃にお店の人が「おかわりは?」と聞いてくる。

筆者たちももちろん毎日ダルバートを一日一度腹いっぱい食べて栄養補給をしていた。レストランによって味付けや付け合せが違い毎回楽しめる。

電源とwifiとホットシャワー

ロッジで売っていたラム酒

ロッジで売っていたラム酒。ミルクティーに混ぜて飲むと体も温まるし最高にうまい。

ほとんどのロッジで充電用の電源とホットシャワー、またはwifiを完備しているが、ネパールの慢性的な電力不足と標高があがると貴重になるので、標高が低いところにある集落以外は有料になる場合がほとんど。

充電は無料のところも多いが約50円、ホットシャワーが高くても200円〜300円くらいだ。

予約はできない

ロッジの部屋

部屋は大体こんな感じ。寒い。

ロッジは事前に予約することはできない。早いもの勝ち。後から来た人の方が相部屋にもなりやすい。標高が高くなるとロッジの数も減ってくるためいい部屋(どこもあまり大差はないが…)に泊まりたい場合は早く着く必要がある。

必要な物と持っていくと便利な物は?

ロバたちが荷物を運ぶ

現金

トレイルも途中の集落にもATMなんてものはない。必ず現金を多めに持っていこう。ちなみに筆者たちは現金が足りなくて本当は10日間トレッキングしたかったのだが急遽8日間になってしまった。ネパールのお金はかさばるためろくに数えずにこれだけ持ってれば足りるだろうと軽いノリで出発してしまったのが原因だ…

アメリカドルを受け取ってくれるレストランやロッジも多いので持っていれば保険として持っていくのもオススメ。

ビーチサンダル

ロッジでくつろぐ時や夜中のトイレ、シャワーを浴びる時に大活躍。

懐中電灯

ロッジの夜は暗い。持っていると何かと便利。

モバイルバッテリー

ロッジでは充電する場所は限られるし、標高が上がると有料の場合も。気温が下がると電池の減りも早い。カメラや携帯の電池がなくなって悲しい思いをしない為にモバイルバッテリーは必ず持っていこう。

レインウェア

雨や雪が降る場合があるので必ず持っていこう。筆者はTシャツの上に着るものが薄いダウンしかなかったのだが、レインウェアは風よけにもなり標高が高いところでは重宝した。

寝袋

たまに必要ないと言っている人がいるが、必ず持っていこう。ロッジにはベットと毛布があるだけで暖房もないし、隙間風も吹く。夜はかなり冷えるので標高が高いところでは寝袋にくるまって毛布をかけて寝ることが多かった。日本から持っていけない場合は現地でレンタルしよう。

速乾タオル

ロッジにはタオルなんてものはない。普通のタオルだと中々乾かない上にかさばるので、速乾タオルがオススメ。日本から買っていっても良いが、現地購入も可能。

トレッキングシューズ

普通のスニーカーで登っている欧米人もいるにはいるが、マチャプチャレBCからABCまでは雪の上を歩いたので防水機能があるトレッキングシューズは必須だ。現地でレンタルもできるのだが、毎日何時間も歩くのでレンタルではなく履き慣れた自分のトレッキングシューズを持っていこう。

トレッキングポール

必要ない人もいるだろうが、これがあるとかなり足の負担が軽減される。1本にするか、2本で両手に持つかは完全に好み。筆者たちは1本だけ。こちらもレンタル可能。

高山病の薬など

高山病の薬や、お腹が弱い人は下痢止めなどの薬。ネパールの薬局では安いインド・ネパール製のジェネリック薬品が必要な量だけ1錠ずつ購入可能。ちなみに高山病は英語で「mountain sicknessかaltitude sickness」。

トイレットペーパーとウェットティッシュ

何かと持っていると便利。トイレットペーパーは芯を抜いて潰して持っていこう。

シャンプーとボディーソープ

ロッジにはないので小さいものを持っていこう。

Tシャツ、下着は少なめに

筆者たちはすぐに乾くTシャツを2枚と予備で1枚。靴下も同じで合計三組。ロッジに着くたびにその日着ていたものをシャワーの時か洗面所で洗濯し、持ち物をできる限り減らしていった。天候が悪く乾かない時は晴れてる時にバックパックの外に縛り付けて乾かした。

本やキンドル

だいたいの人が遅くても日が暮れる前には宿泊するロッジに入る。早いと15時頃の場合も。その後はとにかくやることがない。暇つぶしの道具に本やキンドルがあると便利。

スナック

休憩時間に甘い物などを食べると元気になれる。トレイル中にある売店ではかなり値段が上がるため、できればトレッキング前に買っておきたい。筆者個人的にはスニッカーズがお腹にたまるのでオススメ。

ポカリの粉

筆者たちは持っていかなかったが、ポカリは水より体への吸収が早い為、疲れた体にはしみる。余裕があったら持っていくと助かるかも。

地球の歩き方ネパール編

筆者たちは普段は「地球の歩き方」は使わないのだが、このネパール編はトレッキングに関する情報がとても豊富な為、ガイドやポーターをつけないで行こうと思っている人には役立つはずだ。

トレッキングに必要ないものはどうするの?

Hinku cave

ほとんどの人がトレッキング前にポカラで宿泊すると思うのだが、ポカラにあるホテルやホステルの多くは荷物を保管する部屋を備えていて、トレッキングが終わるまで無料で荷物を預かってくれる。

預かって貰う日数も正確に言わなくても大丈夫。筆者たちも8日から10日の間に帰ってくると言って預かってもらった。

必要書類TIMSとACAP

入山許可証をくれる事務所

入山許可証やら書類を出す場所

ABCトレッキングをする際の必要書類。TIMSとはネパールトレッキング協会が発行する登山許可証で、ACAPとはアンナプルナ保護地域に入るための許可証。費用はTIMSが2000ルピー(約2000円)でACAPが2260ルピー(約2260円)。

申請時に必要なもの

現金とパスポートと顔写真が4枚(書類ごとに2枚ずつ)。写真は現地で撮ってくれるので事前に準備しなくても問題ない。必須ではないが海外旅行保険証があれば持っていこう。

申請書類記入時のコツ

現地連絡先、本国連絡先、保険会社の契約番号と電話番号など書く欄があるが、厳密にチェックされるわけではないので、現地連絡先は滞在先や旅行会社、旅行保険は保険付帯のクレジットカードの情報を記入などと、ある程度適当で問題ない。

コースや登山開始日と終了日なども記入する必要があるが、コースも日にちも、なんとなくわかってる範囲でOK。結果コースや日にちが多少ずれても大丈夫だ。

所得場所

カトマンズの観光局(Nepal Tourism Board)かポカラ(Pokhara)のTIMSオフィスで所得できる。カトマンズの観光局は貯めるから徒歩30分くらいで、ポカラのTIMSオフィスはバスターミナルから徒歩10分くらい。

カトマンズの観光局(Nepal Tourism Board)

ポカラ(Pokhara)のTIMSオフィス

時間がない方は現地旅行会社や宿泊先に取得の手続きを依頼することも可能。その場合、手数料が幾らか発生する。

目安になる日数と筆者たちが行った8日間トレッキング

アンナプルナMAP

マップを見ながらを登山ルートやスケジュールを決める。その作業がもう楽しかった。

目安になる日数は7日~10日。ABCに向かうコースも様々で、2,3日のトレッキングでヒマラヤ山脈が拝めるプーンヒル(Poon Hill)などを回って行く人もいる。体力に自信がない人は日数に余裕を持った計画を立てよう。

筆者たちが行った8日間のトレッキング

1日目:Phedi → Pothana 2日目 → Jhinu 3日目 → Dobhan 4日目 → Machhapuchre Base camp 5日目 → Annapurna Base camp 6日目 → Bamboo 7日目 → Gandruk 8日目 → Kimche からバスに乗ってポカラ(Pokhara)へ。 
本当は10日間かけてゆっくりトレッキングしたかったのだが、ポタナ(Pothana)で現金をあまり持っていないのに気づき急遽8日間のトレッキングに切り替えたので、かなりの距離を歩かないといけない日が何日があった。

帰りは違う道を通って帰りたかったのと、ロッジで出会った人たちの何人かが、ガンドルック(Gandruk)がとても良かったと言っていたのでガンドルックに寄った。バンブー(Bamboo)→ ガンドルック(Gandruk)は疲れが溜まった体に長い距離で、かなりキツかったがガンドルックはトレッキング最終日の夜を迎えるにふさわしい素晴らしい場所だった。

行き方

ネパール山岳地帯

カトマンズ(Kathmandu)→ポカラ(Pokhara)

ポカラまでは空路と陸路で行く方法がある。筆者たちは陸路、バスで行った。約200キロだが道が酷いため8時間くらいかかった。陸路はアドベンチャー感があって個人的にはオススメだが、時間がない人は飛行機で行こう。

1時間かからず着いてしまう。バスのチケットは宿泊先で手配してもらった。手数料入れても1人10USDだったので自分でやるより楽。

ポカラ(Pokhara)→登山口

どこからトレッキングを開始するのかにもよるが、行き方はバスかタクシーの2通り。ABCへ向かう登山口は幾つかあるが、ポカラからバスで行ける、ナヤプル(Nayapul)キムチェ(Kimche)からスタートする人が多いようだ。

筆者たちはフェディ(Phedi)という場所までタクシーで行き、そこからスタートした。

最後に

アンナプルナBCからの眺め

写真では決して伝わらない実物の美しさを是非体験して欲しい。

旅に出る前は全く考えていなかったABCトレッキング。しかしこの世界旅行のハイライトのひとつと言っても良い最高の体験だった。

かなり辛い時もあったが、歩いてゆくごとに変わってゆく素晴らしい風景に感動しっぱなしだった。5日間黙々と歩き続け、ようやくたどり着いたABCで見た素晴らしい景色は忘れられない思い出だ。

間違いなく人生での最高の経験のひとつになると思うので是非チャレンジして欲しい。

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