■目次
到着、そして奇祭のダメージ
無事に飛行機に乗った私たちは遂にサルヴァドールへとやってきた。
ホテルはイタリア系の移民男性がオーナーをしていて、彼は英語を話せた。
この近くで人気のホットドッグ店や観光名所に教会なんかも教えてくれた。
ホットドッグ店がこのあたりでオススメの店ってなんだよ・・・。さすがブラジル!
夜ご飯を食べに外に出て、近くのレストランで適当にあるものを頼んだ。
私はなんとか、それをお腹いっぱいまで食べれた。
夫Hはあまりの体力不足で肉を受け付けなくなっていた。
これは不味そう、ゆっくり休まねば。
ご飯を食べ終わって、外に出ると通りに人がなだれ込むように走って来た。
何!?どうした!?何事?
キリスト教のお祭りらしく、だんじりのように走り回り、山車を引いていた。
その流れは止まることもなくて、ひたすら走って流れて行くのだった。
ああ、サルヴァドールはこんな変な文化もあるのね~。と疲れた体に寝ぼけ頭。
この街はその昔、砂糖産業や奴隷貿易の舞台にもなったブラジル初めの首都で、現在は経済的には恵まれていない。どちらかというと貧困のある地域だ。
疲れの溜まってた私たちは次の日は夕方まで寝込んだ。
ハードだった奇祭ボイブンバ。
あんなに頑張ってお祭りを観戦?したのは初めてだった。
あんなに熱の入ってる地域イベントなんて見たことない。
三社祭だって、自分が担ぐんじゃないんだからと大して見に行ったこともなかった。
大変なことやってんだね、楽しんでるから大変じゃないかもしれないけど。
ヤバイ、この町・・・
疲れもある程度取れたと、外に出て見た。
あのマイケルジャクソンもこの美しい町にきて、PVを撮ったのらしい。
町の大きな広場に行くと、民族衣装を着た黒人の女性たちがいた。
観光客向けにこの服を着て、写真代をもらってるらしい。
私も一緒に撮ってもらった!
黒人さんたちの鮮やかな色使いって本当に素敵。
私たちには出来ない色遣いがカッコよかった。
彼らはもらいすぎることもなく、決まった金額を私たちに提示してくれた。
チップを一緒に渡して、ランチへ。
この土地が観光客が来る場所でもあるせいか、レストランの食事はマナウスよりも断然洗練されているように感じる。
山の上を切り開いて作られたこの町は上下を簡単に移動できるようにと、エレベーターがついていた。
そしてその前には、大きな広場が。
そこに白昼堂々と寝ている男がいた。
しかもそれがなぜかエレベーターの入り口の近いところに寝ているのだ。
警備の人だかが、この人を注意するも男性は起き上がろうとしない。
「うるせー!俺は眠いんだ!」
多分、そんなことを言っている。
H「まじかよ~この町結構ヤバイな・・・。」
C「あれはすごいね。。ゆるすぎでしょ 笑」
H「う~ん、でもあれはあれで笑えるなぁ。」
一回りして、やっぱりまだ疲れているから歩きたくないと部屋に戻ろうと同じ道を通って来ると、サッカー中継をしていて、人が集まっていた。
ヤバイ・・・これはヤバイ。
人が多すぎる。
ベルギーVSブラジル戦
確実に何か盗まれかねない。
ヤバイ。とにかくはぐれないように・・・
荷物から何か抜き取られなようにとバッグを胸の前に持って着て抱え込む。
その横をゴミ袋を持った人たちがすり抜けて行く。
空き缶を集めているのだ。
飲んだ人は、ゴミを床に放り投げ、それを拾う人たちが町を綺麗にして行く。
なんと、素早い経済活動・・・。
さらに、肌を出して歩いていると、筆をこっちに向けて微笑む男の人。
こういう人たちは、観光客にペイントをしてお金を稼いでるとか。
まじか!すごいね、日本じゃ考えられない商売が商売になってる!
それでも、どこにも悲壮感は無いし、みんな楽しそうだった。
とにかく笑顔だし、とにかく踊ったり、歌ったり。
ヘトヘトだし、ここは危険だからと一先ず部屋に戻った。
安宿には珍しく、テレビが配置されていたため、電源をつけて見ると、試合の様子が映る。
試合の相手はベルギー。
二つのチームは熱い接戦を繰り広げており、ボールが取られたり、ゴールにボールが近づくたびに窓の外から、一喜一憂の声が漏れた、というより溢れていた。
それから、トライアングルを鳴らす音も聞こえた。
ちんちんちん、キンコンキンコン、スッチキスッチキ キンコンキンコン
ま~その音をずーっと鳴らしていて、こちらへ向かって着てこの宿の前を通り過ぎて行くまでの間、ずーっと鳴らしていた。
彼が一体何のためにあれをやっていたのかはわからない。
多分何かの店の宣伝なのか、もしくは単に好きだからなのか・・・。
とにかくそういう人は何人かいた。
にぎやかな中、試合は終了し、その後は静かになるのかと思いきや爆竹の音が鳴り響いた。
試合の結果は
ブラジル 1点、ベルギー 2点で、ベルギーが勝利した。
外は勝利したかのような騒ぎだった。
実際もしも勝利していたらどんなことになっていたんだろう?
火曜の夜は俺たちの時間だ
外に出て、ムケッカを探した。
ムケッカはブラジルのこのサルバドール(バイーア地方)の料理で魚介を使ったスープ料理。
観光客向けのカジュアルに楽しめる店っていうのをいくつかブックマークしたけどことごとく高くて断念。
小さな地元の店っぽいお店に入ると2人分で50レアルだった。
ムケッカはクリーミーな味が特徴的な料理で、付け合わせに出された山芋のとろろみたいなものを一緒に食べるのが美味しかった。
とろろもこんな風に食べれるのかな?
そういえば山芋をお好み焼きに入れるって考えた人天才だよね~。
ご飯を食べた後は音のする方へ。
パワフルでリズミカルでトロピカルな音楽が太鼓だけで出来てた。
黒人にはかなわない、最高のリズム感!
でも私もあんなにやってたのにな、エレクトーン。昔の栄光・・・・。お姉ちゃんに誘われてダンスもやってどちらも大好きだった。辞めちゃダメだね。
ダメだな。旅終わったら指動かして、楽器の勉強もしよ。
ダンスを見たり踊りに参加してたら、踊りを先導している男の人がこっちにニコニコやってきて、指を一本立ててポルトガル語で何やら話しかけてきた。
あああ~1レアルでいいからちょうだいってやつね。
H「それ、全員にやらないのになんでうちらにいうの?しかもいま来たばかりだよ?」
諦めて歩いて行った。
もちろんね、みんなに1レアルあげられたら確かにいいんだけど、無限にお金があるわけじゃ無い。
これが、現実。それにまともに働ける人に簡単にお金渡すのって、よくないしね。
この人に渡した1レアルがどんな1レアルになるのか、、彼がなにをしたかったかはわからない。
遠慮なんていらないの
すぐ後ろから来た男性が言った。
男「おい!ヨウ!ちょっとそれ、それ俺にくれないか?」
C「え、これ?」
男「そうだ、それくれ!」
男はサッと私の手にあるコーラのペットボトルを取り上げると自分が持っているプラスチックカップに入れた。
え・・・?
男「ちょっと味が濃かったんだよ、アハハハ♪サンキュー、ところでコレ買う?」
今度は自作の絵を出して来た。
C「うん、いらない」
男「そうか、ありがとな!」
颯爽とさって行く男。
H「なんかああいうのいいよな〜何にも気にしてない感じでさ。なんか俺、ああいうゆるい感じ好き!
ブラジルいいな~住んでもいいかもしれないな!」
うん、そうね、こういうの日本じゃ到底許されないし、その後絵の営業なんかしない。
結構こういう距離感好きだけど。
移住の話
前々から夫H氏は南米への移住が良さそうだと言っていた。
そもそも、この旅を決めたとき、実は日本を出て移住することも決めていた。
日本、というより東京に疲れた、飽きた。というのが夫Hの気持ち。
私はまだまだやりたいこととかもあった。けれど、外に出ることの方が面白そう!と好奇心が優ったからこうして世界で移住地を探すことになった。
もちろん、日本に帰ることも選択肢にはいれていたし、東京では無いどこかというのも選択肢には入れていた。
そして、南米の移住がいいと言っていたH氏の話やネットの情報によると南米の国々は全域的に永住ビザが取りやすいのだ。
それはチリやパラグアイ、アルゼンチン、ブラジルが特にそうだった。
そういう理由で、この時期あたりからH氏はしきりにビザ発行や仕事ができるのか、物価はどうなのか?安全面は?
と様々な面から南米の国々を調べていた。
が、私は若干この気持ちにはついて行けていなかった。
南米なんて、日本の裏側で、飛行機の本数も限られているし、アクセスも悪い。
うちは別に家族仲も悪くないのに、なんでそんな会うことも出来なくなりそうな場所に行かなきゃいけないのか・・・。
何度となくこの話をしていた。
確かに南米は魅力的だった。人が面白い。だから文化も面白かった。
見たことのないものがこれでもかとあったし、とにかく楽しかった。
ブラジルはまだまだ見れていないけれど、それでもマナウスやサルヴァドールなんかを見ていて感じるものがあった。
それは、過剰な競争社会でないということ。
別にブランド品なんてないし、そもそもそんなものつけててもなんの価値にもならない。むしろ危険・・・。(笑)
それに人が穏やかに楽しく暮らしているということが、見ていてヒシヒシと感じられた。
笑ってる人が多いし、昼間から道端で大爆笑してる大人をよく見かけた。
旅に出てから7ヶ月が経ち、東京という場所がどういう場所なのかを別の視点から理解するようになった。
そして、そんなに頑張って生きるってことが人生の豊かさとイコールじゃない。ということが見えて来ていた。
弾丸ブラジルの内陸へ
いくらかこの町を見て、おそらく後4日間もここでグダグダしている必要は無いだろうと見定めると私たちは荷物のほとんどを宿に置いて、小旅行に出ることにした。
バスで6時間西へ行った場所に大きな国立公園がある。
この公園は数日間で回るのは不可能で、1ヶ月使ってゆっくり見て回ったり、キャンプして行く人もいるのらしい。
が、私たちには時間がない!
8月にはスペインに飛ぶ予定だ。
7月中はブラジルとアルゼンチンをめぐる。
今日は7月6日、あと1ヶ月もないじゃない !
早足だし弾丸ツアーな感じはあるけれど、レンソイスに行って二泊、そしてサルヴァドールに戻ることにした。
レンソイス
Booking.comでとった部屋は山の上にある部屋。
町へは歩いて5分。
昼間に乗ったバスは6時間後の日没後にレンソイスに到着した。
私たちは町に出るとここにあるツアー会社をいくつか周り、相場とツアー内容を比較。
3つは回った。
本当は見たかった砂漠の景色もあったけれど、これはポイントまで行くのに時間がかかるし、コスト的にもオーバー。
いつかまたブラジルを訪れてみせよう!
1daytrip
翌日朝には、車がやって来てブラジル人の男性カップルと一緒にツアーへ。
ここで男性同士のカップルが初めてこの近距離に。
私の人生で初めてのことだったかも。
一つ目のポイントまでくると、なぜか急にガイドが車の調子が悪いからと事務所に戻ってしまった。
英語ガイドができるのは彼だけなのに・・・。
仕方がないので、ポルトガル語チームに紛れて周りを散策。
黒色の川が流れていた。
綺麗だったけど、、、日本の方が川は綺麗かな・・・。この川もアマゾンと同じ色をしているなんて不思議。
お土産やさんには美しい石のアートが並んだ。
綺麗な石たち。持って帰りたいけど。。無理だった。。
このあとガイドが戻ってこないわ、車は無いわで、他のガイドにカップルたちが相談してくれ、ポルトガル語チームに紛れた。
後からガイドは戻ってきたけれど、ツアーのほとんどは彼ナシ!でも周りの人たちが翻訳しながら教えてくれて、すっごい助かったんだ。優しいの。
こういうところって外国特有のゆるさだと思う。
こんなことって日本だったらまずありえないでしょう?
それでも、誰も怒らないし。
私たちもどういう地形や歴史があってこういう場所があるのか、とかそういうことは知りたかったけれど、実際自然なんて見て
「すごい!綺麗!美しい!」って思えれば、それでいいような。
青い洞窟も。みた。
近づいてみると、本当に青色で、透き通ってた。
ここはあまりにも綺麗だから、人が泳いではいけない場所なんだとか。
この写真「同化してます!」ってインスタグラムのフォロワーさんに言ってもらって、なんだか嬉しかったんだよね!
ブルー系の服着てるからだろうけど、なんか透明感とか?それは無いか・・・。笑
今度は白い池に。
こっちは入っていいらしい!と中に入って見た。
すると、なんかが体を突いてくる・・・。
くすぐったい・・・。何これ!?
よく見ると白い透明な魚たちが私の体を突いていた。
H「ね~なんかここドクターフィッシュいるね!」
C「これ・・・ドクターフィッシュ!?うわー嫌いなやつ。」
H「いいじゃん、体綺麗にしてくれるんだから。」
C「気持ち悪いでしょ、人の皮膚食べるんだよ?他に食べるものあるでしょ。」
H「俺は嫌いじゃないけどな~」
一度、豊洲だかお台場で試したことがあるけれど、足入れた瞬間に私は大爆笑だったやつ。
この池の透明度はすごいけれど、、
ドクターフィッシュってこんなところにいるんだね。
まじで気持ち悪い。
ささっと上がると、戻って着たガイドと次のポイントへ。
テーブルマウンテン
これが見たかったものの一つ。
国立公園の中にある、風化や地殻変動によってできた、ビルのようにそびえ立つ岩。
時間がギリギリになってたのか、ガイドに先に登っておくように言われた。
私たちはサンセットを見なきゃ!と駆け登った。
後ろからカップルもついてくる。
Hもついてくる。
やっと!着いた!と思ったら、日が落ちていた。
ガイド「CHIKA!!!CHIKA!! CHI-KA————!」
私の名前を呼んでやがる・・・・。
ご存知だろうか?
CHIKAのスペイン語での意味。
Chica、それはGirl、すなわち女の子という意味。
だから意外だったんだけど、外国の人にちかって名前は覚えてもらいやすいんだよね。
そして、奴は私の名前を連呼して叫んでた。
うるさいな~・・・。
彼はこのポイントがかなり好きなのか、こっちからあっちを見ろ!とか、このポイントで写真をとってやるとか、今まで全然やっていなかった態度で色々と私たちを連れ回そうとした。
もう、ゆっくり見させてよ・・・。
でもね、こんな景色を見て、私は思ったことがあったんだ。
生きてるということ。
この旅に出て見て、たくさんの景色に出会った。
このテーブルマウンテンの景色もそう。
ウユニ塩湖の鏡張りの景色、儚げな景色ホワイトラグーン、カンボジアの何もない草原の景色、ネパールのアンナプルナ。
そこには、今までに無い達成感や恍惚感があった。
そしてね、生きるってどういうことか、私はこの時、感じて思ったことがある。
それは、もちろん人のために役立って生きて行くこと。
でもあるけれど・・・、それは一旦置いて。
私は絶景を目の前にして、
「ああ、人はこういう景色を見るために生まれてきたんだ。」と思った。
息すらできなくなるような、涙が出るような、ただただ、見つめるだけで精一杯になる。
そういう一瞬を持つこと。
それが恋人や友人、家族でもいいし、アートや空間でも。
純粋にこういうものを見るために、生まれて来たんだ。と気づくことが私にとっては最高の出来事だった。
それを糧に頑張ろうとかじゃなくて、
ただただ、それを見て私は生まれてこれて、それだけで幸せだ。
と、感じるだけでいい。
それだけで世界が違って見えるようになったから。
きっと、みんなそれぞれがそういうものを持っているのでしょう。
いろんな人の最高の瞬間を聞いてみたいな〜。
うん、とにかく、息を飲む瞬間をたくさん持つことは、細胞を掻き回すほど最高だった!
気持ちいいから!
少しだけ、手を止めて、今日も1日、自分がここにいること。
地球という星が回っていることをじっと感じて見て。小さな森羅万象が自分の周りにもあって、自分もその一つだって気付いたり、考えたりしてもいいと思う。
そんなことを過去の私に、未来の私に。
そして、読んでくれている人にもシェアしたくなった思い出。
生きてるだけで丸儲け!はあながち間違いじゃないってことだね!
谷川俊太郎という詩人の「生きる」という詩の中に
こんな、説がある。
「すべての美しいものに出会うということ。
隠された悪を注意深く拒むこと。」
この言葉にすごい打たれたんだ。
今日の朝日が、夕日が、あなたの心に響きますように。