ヴァルパライソを出て
ラ・セレナという街へ向かうため、毎度おなじみのTur bus を利用して移動する。
8時間ほどの移動。チリの最終目的地はアタカマ砂漠。
そこまでは18時間ほどかかると見られるので、一旦ラ・セレナというチリで二番目に古いと言われる町へと向かった。
バスは前回と同様に広い席にしっかりした座席がついていた。
が、2時間も走ると結局バスが故障して、ランクが低い方のバスに乗り換えさせられた。
中はパンパン、満員状態。
斜め前に座る女性は子供がまだ小さく、最近首が座って、言葉を喋るか喋れないか程度。
やっぱり公共の乗り物の中では静かにさせておきたいようで、起きるとお乳をあげる。
お乳を出したまま、寝る。と、日本では考えられないものを目の当たりにした。
ちょっと驚いたけえれど、こんな風におおらかな方がみんなが過ごしやすいのかもしれない。
お乳をどこであげるかなんてそんなに気にしなくてもいい気がする。
授乳室が無いと外で子供にご飯をあげられないなんて子育てしにくい。
たくさん授乳室があったらもっといいけれど。
バスのランクが落ちて座り心地も悪くなったし、スペースも狭くなったが、車体の一番後方にトイレがついてるのは変わらずそこまでオンボロ、という感じでもなかった。
やはり、庶民の足だろうか、LCCが発達していない南米はバスが大きな役割を担っているのらしい。
嘘つき善人コレクティーボ
バスがラ・セレナに到着すると、困ったことが待っていた。
これまで使っていた地図アプリmaps.meに入っていると思っていた地図が地域が別だという理由で入っていないことがわかったのだ。
さっきまでいたヴァルパライソがチリの南部。
今はチリの北部にいることがわかったのだ。
maps.meはマップをダウンロードすればインターネット無しの状況でも現在地や目的地を確認できる優れものだが、ダウンロードを忘れたということはホテルを予約したのに場所がわからない。
一度ショッピングセンターまで行ってwifiを使えないか試したものの、マップのダウンロードはできず、仕方がないのでタクシーに乗ろうとタクシー乗り場へ向かう。
ドライバーへ住所を見せると2つ知ってる場所があるといい、4000ペソで行くと言ってきた。
だいたい700円弱だ。
場所がどれほど離れているかもわからなかったので仕方なく承諾して乗り込む。
でも、なんだかおかしいような気がする。
あの、運転席に書いてある料金表みたいなものはなんだ?400って書いてあるのに4000?
高いような気もしたが何しろ情報がないので仕方がない。
結局ホテルまでついてオーナーに電話してくれたが、そのホテルが空いてないという。
なぜ?
今度はH氏が変わって電話で話す。
今部屋が空いてないから別の部屋を用意するから別の場所で待っててほしいとの話だった。
ダブルブッキングされていたということだろうか。
なぜだかわからないが、ドライバーはオーナーが指定したその場所へ向かってくれた。
そして、家の前ではなく何かの駐車場に駐車した。
それからホテルオーナーが来るまでの間に自分の話をしてきた。
「自分はフランスで3年働いていたことがあるからフランス語なら話せる。英語は話せない。
自分はもう歳をとってるからお金目当てで仕事はしていない、人のために働いているだけなんだ。」
と。そんないいやついるのかよ。
心の中でヤジを入れながら話を聞き、そりゃ素晴らしいね。と馬鹿みたいに相槌を打っていた。
15分ほど待っているとやっと車が現れた。
「やあ!君達か!会えてよかったよ!車代?5000?オッケー僕が先に払っておくから後でホテル代と一緒にちょうだい!いいよいいよ、大丈夫!あ、こちらは僕の妻と娘だ。娘よ、挨拶しなさい!ハポーネだって!」
と、かなりスピーディーにコミカルに進められた。
そしてタクシーは高いからコレクティーボを使いなさい。と教えられた。
コレクティーボっていうのはこの車みたいなことだ。
と、おじさんの車を指していう。
全然安くなかったのにこれが安いの?チリって怖い。
頭に疑問符を浮かべながら「ok」とだけ言うと彼は私たちを学生たちが使っていると言う部屋に連れて行った。
あとでわかったが、このタクシーはコレクティーボだったのにタクシーとして動き大幅にボったくられていたことがわかった。
おじさんは電話もしてくれたし、どうにか泊まる場所が見つかれないかとやってくれていたけど大嘘つきだったことがわかってガックリした。
いい人だと思っていた人がただの嘘つきだと気づくと本当に残念な気持ちになる。
あのドフトエスキーも言っている。
「人生において何よりもむずかしいことは、嘘をつかずに生きることだ。そして自分自身の嘘を信じないことだ。」
自分は嘘をつけない人間だと思っているけど、こういうことがあるとこれからも嘘だけはつかない人間でいたいと自分の心を見直す。
彼は反面教師だったんだ。と心の中でそっと蓋をした。
ブッキングミス
学生たちが泊まっている家で、H氏とホテルのオーナー、私の3人で私の予約を確認する。
オーナー「5月8日〜5月10日の予約になってるね、今日が7日だから・・・!やっぱり!君の間違いだ〜!ワッハッハ」
C「あ゛〜ごめん!本当にごめんなさい!間違えてた!ごめ〜ん!!!」
H「やめてよ〜、本当」
オーナー「いいよいいよ、ここに泊まるか、もしくは友達が家貸してくれるって言うからそこに泊まる?料金は一緒でいいよ」
一通り、学生寮を見せてもらってキッチンや風呂場のカオス具合を確認すると、私たちはできれば友人宅への移動をお願いした。
さらに移動した先の友人宅は集合住宅でプールや公園も敷地内にあり、セキュリティもしっかりしていた。
街に到着したのは夕方4時ごろだったのに、部屋が決まった頃には7時。もうあたりは暗くなっていた。
スーパーマーケット
夜はスーパーマーケットに行き、自炊の材料を調達する。
米、パスタが安いから。とそれに野菜、肉などを買う。
日本では、4個入りの玉ねぎ、5個に袋詰されたオレンジ、150gにカットされた肉、10個入りの手羽元。のようになんとなく量が決められて、それを購入する形式。
チリに来たら野菜は自分が欲しい分だけを計量。
肉は精肉売り場のスタッフが軽量、魚売り場無し。
と言うのが普通だった。
これはフルーツなど一気に食べ切れないものには嬉しかった。
それに日本で使われている発泡スチロールのパックはどこにも無い。
見た感じ不潔でもないし、欲しい分だけもらえる。これでいいじゃん!あんなに綺麗に包装すること無いな〜なんて。
洗ってまた使えると一番いいんだけどね、昔みたいに。
ラ・セレナの街
綺麗な街だ。何もない。
サンティアゴの次に古い街と言われるだけあって、建物に重厚感がある。
それにキリスト教会がいくつもあったりする。
ご飯屋さんに入って、スペイン語が話せないでもなんとか頑張ってお互いに話してみる。
話せないことで文句を言われたり、差別を受けることも無いし、公共の乗り物に乗って言葉がわからないので頭の上にハテナをつけていても特に怒られることは無い。
「ねえねえ、今何時?」だとか「これ荷物置きにものを置いてもらえる?」などとスペイン語で頼みごとをされたりする。
そういう線引きのない感じがなんだか快適さに繋がって、居心地よく思えた。
町自慢のHot Dog
ぶらぶらと歩いていると、「なんだかお腹が空いたような気がするね。」とH氏。
そういえば15時。
H「カフェでちょっと軽食でも食べてみる?」
C「いいよ」
なんとなくフラッとカフェに入ってみると、中はなんとも古めかしい雰囲気の老舗感溢れる出で立ち。
スペイン語のメニューを渡されて、席にどうぞ!と案内される。
少しずつ少しずつ覚えているスペイン語の表示を見ていると、Hが言う。
H「みんなホットドッグ食べてるね!美味しそう。」
C「本当だ、あんなに大きいの食べてる!!」
H「ちょっとあれ、食べて見ない?」
C「食べたいの?いいよ、大きいから二人で一つでいい?」
H「そうしよう!」
スペイン語で書いてあるメニューを読んでみる。()内の表示は無い。
・ TE (TEA)
・CAFFE (COFFEE)
・LECHE (Milk)
・Hot Dog
こんな感じ。
何もわからないところからにしては何と無くでも読めるようになって来たな。と少し分かる単語が出て来たことに安心する。
私たちはそれぞれCaffe Latteを頼むと、数分後に大きなマグカップで出て来た。
そして、大きなHot Dog。
Hot Dogスタンドがあるのが面白い。これでhot dogの形が崩れないと言うわけだ。
口へと運ぶ。
パクっ!大きな大きなhot dogなので私は自分の小さな口を目一杯広げて食べる。
学校給食で出たような柔らかなパンに挟まれた弱々しい皮のないソーセージ、それにしっかりとマッシュされたアボカドにマヨネーズの酸味がアクセントになっていた。
全てがフッワフワなので重みを感じない。
なぜか全てが懐かしく感じるハーモニー。
店内の所々に残る黒ずみも、私たちを笑顔で見守る店員たちも。なんだか全てが温かい。
H「美味しいね!重くないし、ここいいね~!」
H氏も同じように感じてるらしい。
ミルクが多めのcaffè latteで流し込みながら店内を眺めていると、古くからやっていることを称えたような記事が貼ってあった。
どうやら町の名店らしい。
美味しいホットドッグの店、この気の抜けた感じ。日本には無いんだよな。
気合の入ったhot dog店は三宿にもあったけど、老舗でこの味でこの雰囲気。最高だ。
セビーチェを求めて
満足した私たちはラ・セレナは海沿いの町でビーチの近くにシーフードがあるとのことでセビーチェを食べたいとH氏にリクエストして、その場所まで歩いた。
3キロほどあったのだろうか。2時間ほど、歩き続けた。
町から海に向かって歩き、そのあとはビーチを歩いた。
海に入れるようなあたたかさでも無く、人もまばら。
私は、海に入るのももちろん好きだけど、日本の海だったら春とか秋に行くのが好き。
サーモマグにコーヒーを入れて、敷物を持っていって太陽の柔らかな光と太陽熱のエネルギーを感じながらゆっくりする。
わざわざ葉山とかまで行って、ゆっくりする。
H氏も一緒に行って提案したことがあるが、「何もしないこと」が苦手なH氏とすると退屈そうにされた。
本を読んだり、ただボケーっとしたり、そういう雰囲気を楽しむってのはこの人には無いのか。なんて思っていたが、今ならできそうだ。
あの頃はきっとパワーが有り余っていたし、時間にも追われていたから誰かに会ったり、何かをしたくてたまらない時期だったんだろう。
夕日を眺めながら、私たちはゆったりとそこを歩いた。
釣り人たちが冷たい水に浸りながら、釣り糸を波の向こうへと落とす。
ビーチの美しさに見とれていたが、後ろを振り返るとそこには砂漠のような景色が広がっていた。
なんと美しいんだろう。
町からこんな風に歩いただけで、すぐにこれだけの自然に囲まれるなんて。
田舎町だけれど、素晴らしく綺麗だった。
2時間歩いた先にセビーチェの店があると聞いていたが、結局そこで店を見つけることが出来ず私たちはコレクティーボを使って町へと戻った。
久しぶりの外食
家でつくってご飯にしようと言う案も出したが、あたりも暗くなっていてもう作り出すのには遅すぎる。
と言うことで、私たちは町のレストランに入った。
重厚感のあるお店だ。店内にはグリルもある。
私は楽しみにしていたセビーチェ、H氏はOOO、そしてチリの酒、ピスコサワーをオーダーした。
テーブルにサルサとアボカドのタルタル、パンが並び、ピスコサワーが乗る。
私たちは笑顔で乾杯して、チビっと日本酒を飲むようにサワーを飲んだ。
アルコールの高さで喉がキィっと熱くなる。
甘くて酸っぱいそれでいてしつこく無い、レモンの爽やかな味が口の中にフワァっと広がった。
ピスコサワーに入っているものは何か?
ピスコ(ぶどうの蒸留酒)
砂糖
レモン汁
卵白
これをシェイクしたものがピスコサワー。
卵白が入ってるなんて信じられないが、これがまろやかさを出しているのだろう。
度数の高い酒だったが、酸っぱくてしょっぱいセビーチェと抜群の相性で食が進んだ。
ラ・セレナでは本当に何をしたわけでもなかった。
ただただ、街を散策して、海を見て、セビーチェとピスコサワーを楽しんで、家でピラフを作って食べた。
その繰り返しだった。
San Pedro de Atacama
サンペドロ・デ・アタカマ、アタカマ砂漠へ。
3泊ほど過ごすと、さらに北上し、アタカマ砂漠へと向かうことにした。
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